情報発信

提言

2021/06/21

コーポレートガバナンス・コード改訂、パブリック・コメント集計結果

先ごろ東京証券取引所よりコーポレートガバナンス・コード改訂に係るパブリック・コメント集計結果が公表されました。コメントの延べ総数は633個を数え、本改訂に対する各界からの高い関心が伺えます。 
>> パブリックコメント集計結果(東証サイト)

当研究会も既にご案内のとおり、本年428日付で「コーポレートガバナンス・コード改訂案に対するコメント」と題し、意見提出いたしました。

当研究会からの各コメントに対する主催者側の考え方につき、上記集計結果の項番1111112260319478および531にて、それぞれご確認いただけます。また幸いにも巻末の「提言者」一覧の筆頭に、当研究会名が記載されましたことも付記させて頂きます。 

本邦のコーポレートガバナンスの更なる高度化のため、次回改訂に向けて皆様のご支援を引き続き宜しくお願い申し上げます。

2021/04/28

コーポレートガバナンス・コード改訂案に対するコメント

 2021年4月28日
一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

代表理事 門多 丈

コーポレートガバナンス・コード改訂案に対するコメント

 

今回の改訂案では、新たに5つの補充原則が新設され、合計83原則からなる構成となった。特にグローバルの喫緊課題であるサステナビリティ経営実現に向けて、取締役会の機能発揮に対する期待が強いメッセージと共に込められている。また取締役会と並んで監査役会の重要性にも踏み込み、我が国のガバナンス機関設計制度との親和性もより高くなっている。更に上場子会社にまつわる諸課題を整理するとともに、プライム市場上場会社に対しては一段高い規律を求めるなど、諸制度と合理的な整合を取りながら、我が国のガバナンス高度化の方向性を示すものになっている。 

 本改訂コードの運用にあたって、その趣旨が十分に利用者に浸透することを願い、以下のコメントを当研究会の意見として表明する。

 

1.補充原則2-4①

 本補充原則は、取締役会の多様性を確保することを目的に、企業の中核人材の登用等で女性や外国人、中途採用者の登用を積極的に推し進めるべく新設されたものと理解している。現在の各企業の取締役会の多様性が、主に社外人材の登用で進められていることから、社内の中核人材の多様性が将来的に取締役会の多様性に繋がる観点からは、賛成できる原則である。

 その一方で、後段に記載されている「社内環境整備方針」という文言が極めて抽象的であり、企業によりその対応がかなり異なることが懸念される。よって当該補充原則を運用する際の実務指針として以下を提言する: 

【提言】

  • 上場会社は当該補充原則の運用に際して、「人材育成方針と社内環境整備方針」を「人材採用と育成の基本的な考え方とその方針」等、より具体的な文言に落とし込み、社内での徹底とエンゲージメントに備えるべきである。

 

2.補充原則3-1②

 本補充原則の後段は、プライム市場上場会社の株式について、海外機関投資家が売買を活発に行う市場であるとの前提に立ち、企業からの情報発信につき英語での開示・提供を進めるものである。

 しかしながら、コード記載にある「開示書類のうち必要とされる情報」は誰が必要としているのか明示されておらず、また開示書類の内容も記されていないことから、各社における実務指針として以下を提言する: 

【提言】

  • プライム市場上場会社はグローバルでのエンゲージメント活動に備えるべく、英語による開示対象およびそれらに必要とされる情報を自ら定義し、その網羅性や十分性を確保すべきである。

 

3.補充原則3-1③

本補充原則は、今回の改訂案で新たに新設された原則であり、上場会社が自社のサステナビリティを重要な経営課題として認識し、この課題について積極的・能動的な対応を一層進めていくことを推し進めるものであり、その新設には反対するものではない。

 しかしながら、プライム市場に上場予定の会社にあっても、TCFDが要求している4つの項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)の全てにつき、執行側で態勢を整備し、取締役会の承認を経て開示可能な状況にある企業は少数に留まり、加えてTCFDが開示推奨している気候関連リスクと機会が与える影響を評価するための「シナリオ分析による開示」まで至っている企業は極めて少ない現状にある。 

従って原則でTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を拙速に進めることには、かえって企業の負担感の重さから、中途半端な開示を進める懸念がある。この現状を踏まえるとともに、本補充原則のSDGs上の重要性を考慮し、実務指針として以下を提言する: 

【提言】

  • プライム市場上場会社は、TCFD等に沿った開示に先立ち、足元の現状から到達すべきゴールまでの工程表を作成し、年度毎に「コンプライ・オア・エクスプレイン」を経て「コンプライ・アンド・エクスプレイン」を自主的に行うことにより、その改善プロセスと結果を継続的に開示すべきである。

 

4.補充原則4-11

 取締役会のスキル・マトリックスの開示を求める今回の改訂案は、取締役会の実効性確保に向けて大きな前進である。これにより各社はそれぞれの中長期戦略に沿って、独自の取締役会の構造を再構築することになる。 

 取締役会構成員の知識・経験・能力のバランスは各社毎の判断に委ねられるも、改訂案では唯一「独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである」旨、具体的な必要条件を示している。しかし「経営経験」のみでは一般に社長等を意味するものとして理解される可能性があり、候補者の属性を狭めかねない。

 これに対する解釈指針は、同時に開示された「参考1:コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について、202146日付」(以下、参考1)の2頁脚注に漸く求めることができる(CEO等の経験者に限られるという趣旨ではない)。

 当該補充原則は取締役会の構造設計上極めて重要であり、誤解なきよう本コードが運用されるための実務指針が必要と思われる。 

 従前より本コードでは、取締役会および監査役会に対する対語として、経営執行に責任を有する者を「経営陣幹部」と称している(例:補充原則3-2②(ii))ことを実務上は援用すべきである。

 更に取締役には、個社およびグループの内部統制システムに対する構築・運用責任があることをスキル・マトリックスに反映し、それに見合う独立社外取締役人材として、当該システムの有効性評価に実績のある監査役等経験者の選任も推奨したく、以下の実務指針を提言する: 

【提言】

  • 上場会社は中長期戦略に照らして、取締役会として求められるスキル・マトリックスを作成し、適切な人材配置を行うべきである。
  • 独立社外取締役の選任に際しては、経営陣幹部や監査役等として実績のある人材を含め、スキル・マトリックスの充足を図るべきである。


5.補充原則4-13

当研究会は第一次改訂時より一貫して、「内部監査の制度化」に関する提言を行ってきた。今回の第二次改訂プロセスでは特に、「監査に対する信頼性の確保及び内部統制・リスク管理」に関して、フォローアップ会議での活発な議論があり、内部監査部門を「三線モデル」と「dual reporting line」の枠組みの中に位置付けることについてのコンセンサスが、有識者の間で形成された。結果、補充原則4-3④にてリスク管理体制における取締役会と内部監査部門の関係性が明示され、更に補充原則4-13③では取締役会と共に監査役会もその機能発揮のため、内部監査部門がこれらに直接報告を行う仕組みの構築の必要性が盛込まれた。このことは当研究会の提言と方向性を一にするものであり、改訂作業にご尽力いただいた関係各位に御礼申し上げたい。

 一方、コード改訂案本文では、内部監査部門の経営陣幹部からの独立性については必ずしも明示的に表現されず、参考1の5頁「(2)監査に対する信頼性の確保及び内部統制・リスク管理」の中で、漸くその箇所が確認できる。各社においてコードへの対応状況を考察する際、参考1まで仔細に参照せず、コード本文のみが独り歩きする可能性が残ることより、当研究会は従来の「内部監査の制度化」提案を実務指針として、以下のとおり再提言する: 

【提言】

  • 上場会社において、監査委員会、監査等委員会及び監査役会は内部監査部門に対して、監査機能上の指揮命令権を確保すべきである。
  • 上場会社は、第3線として内部監査部門を明示し、またガバナンス機関において監督・監査責任を担う監査委員会、監査等委員会及び監査役会は内部監査に関する監査機能上の重要事項の意思決定に責任を持ち、その監査活動に対して適切に指揮命令を行うべきである。
  • ここで内部監査に関する監査機能上の重要事項とは、内部監査部門長の任免、内部監査規程の承認、内部監査計画の承認等を指す。

 以上

2021/01/19

「内部監査の制度化」に関する再々提言

 令和3年1月12日
一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会 理事会

代表理事 門多 丈

 内部監査の制度化

 第3のディフェンスラインである内部監査の強化は、不祥事に対する有力な打ち手の一つとして認識されるも扱いは任意監査であり、監査役等監査や外部会計監査に比べてその位置づけが制度的に十分に担保されていない。しかし近年増加傾向にある監査等委員会設置会社では内部統制システムに依拠する監査を前提に、当該委員会が自身の監査資源として内部監査部門へ指揮命令を行い、事実上組織監査として当該機能を制度監査に組み込んでいる。この運用は指名委員会等設置会社でも同様である。

 一方上場企業の多数が選択する監査役会設置会社では、監査役会は経営者の職務執行の監査の一環として経営者の内部統制の整備・運用を監査する立場にあり、監査役会が内部監査部門を指揮命令することに抵抗が生ずる。結果、監査役会と内部監査部門の連携は情報共有レベルに留まり、監査役等監査の品質において他の二者と比べて異質となるリスクが生ずる。

 ここでガバナンス3類型間の監査役等監査の品質の等価性を担保し、かつ内部監査に制度的位置づけを付与すべく以下の改訂を提言する。

 <コーポレートガバナンス・コード改訂補充原則4-13③案>

  上場会社において、監査委員会、監査等委員会及び監査役会は内部監査部門に対して、監査機能上の指揮命令権を確保すべきである。

 上場会社は、第3のディフェンスラインとして内部監査部門を明示し、また統治機関において監督・監査責任を担う監査委員会、監査等委員会及び監査役会は内部監査に関する監査機能上の重要事項の意思決定に責任を持ち、その監査活動に対して適切に指揮命令を行うべきである。

 ここで内部監査に関する監査機能上の重要事項とは、内部監査部門長の任免、内部監査規程の承認、内部監査計画の承認等を指す。

再々提言に際して

 当研究会は平成30年1月に第一次コーポレートガバナンス・コード改訂プロセスに合わせて「内部監査の制度化」に関する提言を実施、改訂版への反映は見送られるも、同年12月に再提言を行うなど一貫した立場をとってきた。この間、アカデミアや経済界からもガバナンス機関と内部監査部門の関係性について、積極的な発言が目立つようになってきた。

 更に現在進行中のコーポレートガバナンス・コードの再改訂プロセスを進めるフォローアップ会議においても、主要な残課題の一つとして「監査に対する信頼性の確保」が取り上げられている。特に平成31年4月に公表された同会議の意見書(4)にて、「内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みの確立を促すことが重要である」と明示されたことは、当研究会の主張と軌を一つにするものとして心強い。 

 上記意見書では内部監査部門の報告先として、ガバナンス機関に監査役会も含まれるとの整理がなされ、本邦の一部に残る監査役会と内部監査部門の報告関係に関する議論に終止符を打つものとしても期待される。 

 ガバナンス機関における監査の信頼性を確保するためには、トップマネジメントを含む全ての監査対象からの独立性の確保と、高い専門性の維持が不可欠である。同時に、広がりを見せる監査スコープに対応するための適切な監査資源の確保も重要である。これらの諸条件を満たすためには、三様監査を従来の連携関係から監査役等によるリーダーシップのもと、監査機能上のプロフェッショナル・パートナーシップとして再定義することを新たに提唱したい。それはガバナンス機関における監査機能の高度化にも直接に資するものである。 

 その為にも三様監査中、唯一任意監査として残る内部監査をコーポレートガバナンス・コード等にて制度化し、ガバナンス機関における監査機能の一翼を担う重要機能として明示すべきである。具体的には三線モデルにおける位置付けを明確にすると同時に、所謂デュアルレポーティングラインを構築し、ガバナンス機関における監査役会等の監査機能との関係性を確固たるものにすることである。詳細は冒頭に再々掲した当研究会の提言を参照願いたい。 

 ガバナンス機関における監査機能の高度化を問う重要イベントとして、「監査上の主要な検討事項」(KAM: Key Audit Matters)が2020年4月1日開始事業年度より適用された。更に2022年4月に創設される東証のプライム市場では、時価総額や利益基準等の量的ハードルと共に、より厳しいガバナンス基準の適用という質的ハードルも設定される。後者を支える新改訂コーポレートガバナンス・コードには、前述のフォローアップ会議における残課題に対する解答が具体的に盛り込まれることを期待し、ここに当研究会の「内部監査の制度化」に関する提言を再々掲する。

以上

2020/03/05

東京大学未来ビジョン研究センターの政策提言に関する意見

「内部監査の制度化に関する提言」(20181月)の公表に続き、当研究会は当該テーマを中心としたシンポジウムを昨年10月に開催、監査役会等を含むガバナンス機関と内部監査部門との新たな関係性について広く議論を進めてまいりました。幸い当該テーマへの関心は産官学に広がりを見せ、昨年12月には東京大学未来ビジョン研究センターから「日本企業における内部監査機能の強化に向けた政策提言」が公表されています。しかし共通性の高いテーマを扱いながらも、監査役(会)の役割に対する理解などいくつかの重要な論点において、彼我の間には距離感があります。今回この距離感が持つ意味を考察するべく、当研究会としての意見を纏めここに公表いたします。

 

東京大学未来ビジョン研究センターの政策提言に関する意見

 2020年3月5日
一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会 理事会
代表理事 門多 丈

201912月に東京大学未来ビジョン研究センターより日本企業における内部監査機能の強化に向けた政策提言」(以下同提言)が日本語および英語でWEB公開され、213日付で(一社)日本内部監査協会のホームページでも紹介されている。同提言は日本の内部監査機能の高度化という文脈において、内部監査人を20人以上擁し統合報告書を作成している49社をサンプルとする実証的研究を基に、今後内部監査機能が進むべき方向性としてTrusted Advisorを標榜し、三線防衛モデルの確立やガバナンス機関と経営執行に対する二重レポート・ラインの確保の重要性等について、懇切に説明している。

同提言は当研究会が先般のコーポレートガバナンス・コード改訂時にパブリック・コメントとして公表した「内部監査の制度化に関する提言」(下記参照)と関連性が高く、日本を代表するアカデミアからも積極的にオピニオンが表明される機運は歓迎したい。

しかし現場のガバナンス機関において日々経営執行を監視・監督する立場からみて、同提言における特に以下の2点については議論が必要である:


 1.「攻めのガバナンス」と「守りのガバナンス」という類型化の是非

同提言では内部監査の使命ないし期待役割として、「価値の保全/コンプライアンス等の監査/守りのガバナンス」および「価値の向上・創造/業務の有効性・効率性監査、ビジネスモデルや経営戦略に係るリスク監査/攻めのガバナンス」という2類型を明示し、内部監査機能の高度化プロセスにおいて前者から後者をもカバーすべきとしている。

一般に新規事業進出等の「攻め」の場面における経営判断において、ガバナンス機関がまず考慮すべきは、固有リスクの高まりに応じて当該社のリスク許容度と残余リスクの兼ね合いを吟味し、統制力をどこまで高めるかというリスクマネジメントである。それは戦略推進による機会獲得とセットで議論されることが常である。「攻め」の局面においても固有リスクの一要素としてコンプライアンスリスクも当然高まることを我々は想定し、内部統制の見直しを進める。すなわち同提言の様にコンプライアンスリスクだけをとっても、それを「守り」の局面に限定することには難がある。

更に業務の有効性・効率性確保はCOSO内部統制の目的の一つであると同時に、トップラインの成長が十分に望めない中、イノベーション創出に苦闘する日本企業にとって、従前の業務プロセス改善を超えたオペレーショナル・エクセレンスとして、既存事業のスコープの中で収益を確保するための切り札でもある。また当該事項は内部統制システムの重要な構成要素の一つとして会社法施行規則第1001項第3号においても掲げられ当然に監査役監査の対象であり、同提言が示唆する「攻め」のみにグルーピングしきれない。このことは後述する同提言における監査役(会)の役割の理解とも衝突する部分である。

ガバナンスの現場において「攻め」と「守り」は表裏一体・不可分であることは明白である。「攻めのガバナンス」という用語は、我が国の経済が長期デフレ状況から脱却するため、各企業が積極的にリスクを取りに行く経営姿勢に転換するための後押しとして国内で使うには極めて重宝ではあるが、その対語としての「守りのガバナンス」とともにグローバルで通用するかは検討が必要である。 

2.ガバナンスの実務において監査役(会)の役割は限定的か否か

同提言は「内部監査部門の組織上の所属先をより上位のレベルに変え、IIAスタンダードに規定されているとおり、取締役会、監査委員会、監査等委員会へのfunctionalなレポート・ラインと社長へのadministrativeなレポート・ラインの二つのレポート・ラインを内部監査規程で定めるべき」とし、更に「監査役(会)へのレポート・ラインは望ましくないと考える(攻めのガバナンスにおける監査役(会)の役割が事実上限定的な点を踏まえると)」と結んでいる。

上述のとおり、ガバナンス機関の最前線において攻めと守りは不可分であり、例えば取締役会における攻めの議論において、監査役が排除されることはありえない。コーポレートガバナンス・コードの「原則4-4.監査役及び監査役会の役割・責務」においても、監査役及び監査役会がその役割・責務を十分に果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切ではなく、能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきとし、限定条件の排除を推奨している。実際当該原則に対してほぼ全ての上場会社がコーポレートガバナンス報告書でコンプライを表明していることから、同提言は現状を反映しているとは言い難い。

我々が危惧するのは同提言の当該部分がメッセージとして、監査役会設置会社は他の2者(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社)に比べガバナンス構造として不完全もしくは劣後するとの印象を与えかねないことである。 

我が国の取締役会の過半が未だマネジメント・ボードとしての性格を残しているが故、監査役会による取締役会および経営陣に対する監視・監督機能への期待は依然として強い。その結果として上場会社の7割強が監査役会設置会社を選択し、様々な工夫を凝らしてガバナンス機関の実効性確保に努力している。この現状を鑑み、我々は監査等委員会および監査委員会のみならず、監査役(会)と内部監査部門間のレポート・ライン確保の合理性を再度強調したい。 

今後時間軸の中でモニタリング・ボードへの移行は順次進むだろうが、そのプロセスにおいて監査役会を含むガバナンス機関と内部監査機能の関係性はより緊密となり、かつそれぞれの機能は高度化されるべきである。そのためには各団体や個人が個別に情報発信するだけでなく、例えば日本監査役協会と日本内部監査協会による共同研究や、経営者団体、アカデミアおよびガバナンスの実践団体(例えば当研究会)を交えての議論を具体的に進めるべきである。

2018/12/18

「内部監査の制度化」に関する再提言

日本のコーポレートガバナンス改革は「コーポレートガバナンス・コード」「スチュワードシップ・コード」を指針として継続的に進められています。昨年のコーポレートガバナンス・コード改訂、「対話のガイドライン」制定後も、さらなる改革に向けて金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」での議論が開始されています。
当研究会ではコーポレートガバナンス・コードにおいて内部監査制度の位置づけをより明確にするよう、平成30年1月9日、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」事務局に提出しましたが、現状を反映した形で再提言としてまとめました。


            「内部監査の制度化」に関する再提言

平成30年12月18日
一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会 理事会

代表理事 門多 丈

 本年4月、当研究会はコーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)の改訂に伴い掲題の提案をパブリックコメントとして提出した。結果、コード本体の当該条項(補充原則4-13③)への反映は見送られるも、本年6月に公表された「投資家と企業の対話ガイドライン」において監査役と内部監査部門の適切な連携の必要性につき言及されるなど、理解の進捗が見られた。 

 現在ほぼ全ての上場企業が完全コンプライを目指すほど、CGコードは定着している。一方本年も著名メーカー各社の品質不正、有力地銀の不正融資、グローバル企業集団の不透明なトップマネジメントの報酬開示等、コーポレートガバナンス関連の課題は頻出している。この状況を看過することはCGコードの形骸化に繋がり、コードの実効性確保のためには更なる議論の継続が必要と考える。 

 当研究会は一連の不祥事の根本原因の一つとして、トップマネジメントの影響下にある第1および第2ディフェンスラインの有効性に問題があること、また特に監査役会設置会社において、左記の2機能に対峙すべき第3ディフェンスラインたる内部監査部門のトップマネジメントからの独立性が、制度的にいまだ未確立であることに引き続き警鐘を鳴らしたい。 

 コーポレートガバナンスの現場においては、上場企業の4社に1社が監査等委員会設置会社に移行し、著名企業を含む各社がその制度的メリットに注目している。例えば日本弁護士連合会は「社外取締役ガイドライン、20153月改訂」において、監査等委員会による内部監査部門を含む内部監査システムを活用した組織的監査を推奨、同委員会の内部監査部門に対する直接的な指示を可能とし、従前の監査役(会)と内部監査部門の間接的な関係性との差異を示唆している。 

 また経済同友会はさらに踏み込んで「社外取締役の機能強化、20185月」において、内部監査部門長の人事や評価は、監査の職務を行う会社法上の機関(監査役(会)、監査等委員会、監査委員会)にも同意をとるべきとし、ガバナンス機関設計上の非対称性の縮減を提唱している。 

 これらの状況を鑑み、当研究会は本年4月の提言内容が今だに本邦のコーポレートガバンスの高度化に有益と考え、以下その内容を再掲する:

 内部監査の制度化

 第3のディフェンスラインである内部監査の強化は、不祥事に対する有力な打ち手の一つとして認識されるも扱いは任意監査であり、監査役等監査や外部会計監査に比べてその位置づけが制度的に十分に担保されていない。しかし近年増加傾向にある監査等委員会設置会社では内部統制システムに依拠する監査を前提に、当該委員会が自身の監査資源として内部監査部門へ指揮命令を行い、事実上組織監査として当該機能を制度監査に組み込んでいる。この運用は指名委員会等設置会社でも同様である。

 一方上場企業の多数が選択する監査役会設置会社では、監査役会は経営者の職務執行の監査の一環として経営者の内部統制の整備・運用を監査する立場にあり、監査役会が内部監査部門を指揮命令することに抵抗が生ずる。結果、監査役会と内部監査部門の連携は情報共有レベルに留まり、監査役等監査の品質において他の二者と比べて異質となるリスクが生ずる。

 ここでガバナンス3類型間の監査役等監査の品質の等価性を担保し、かつ内部監査に制度的位置づけを付与すべく以下の改訂を提言する。

 <改訂補充原則4-13③案>

  上場会社において、監査委員会、監査等委員会及び監査役会は内部監査部門に対して、監査機能上の指揮命令権を確保すべきである。

 上場会社は、第3のディフェンスラインとして内部監査部門を明示し、また統治機関において監督・監査責任を担う監査委員会、監査等委員会及び監査役会は内部監査に関する監査機能上の重要事項の意思決定に責任を持ち、その監査活動に対して適切に指揮命令を行うべきである。

 ここで内部監査に関する監査機能上の重要事項とは、内部監査部門長の任免、内部監査規程の承認、内部監査計画の承認等を指す。

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

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