セミナー

2016年 月例勉強会

2016/12/15

【第77回月例勉強会】創造的リスクテイクを可能にする金融機関のガバナンス ~顧客の視点とリスクカルチャーの醸成~

■講師:森本 紀行 氏(HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長)

■講演内容:
金融庁の森長官は、銀行の使命を「顧客との共通価値の創造」とされ、投資信託等の資産運用関連業務については、フィデューシャリー・デューティーの徹底、即ち、顧客の利益の視点で最善を尽くす義務の徹底を求められるように、一貫して、顧客の視点を強調されています。また、銀行規制のあり方については、従来の「静的な規制」、即ち、数値的に一元化された諸リスクの集計値に対して、それを吸収するに足る自己資本等の維持を求める手法から、新しい「動的な監督」、即ち、顧客の視点での経営の徹底を促す対話への革命的な転換を志向されています。
長官の意図は、金融機関に対して、顧客の視点での価値創造を本源的リスクテイクの対象に位置づけ、経営の最高の次元において、その具体的内容を自覚的に定義することを求め、その結果、伝統的なリスクの管理の機能を、一つ下の次元の従属的経営統制機能として、再構成するように促すものです。その要諦は、とるべき本源的リスク、最小化すべき付随リスク、決してとってはいけない非本源的リスクについて、組織の全体において、空気のようなものとして、組織風土として、共通の認識が確立していること、即ち、リスクカルチャーが確立していることです。以上の視点で、リスクカルチャーの醸成による金融機関のガバナンスについて、お話しいただきました。

■講師略歴:
三井生命のファンドマネジャーを経て、1990年1月当時のワイアットに入社。日本初の事業として、年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資機会を発掘し、専門家に運用委託するという、新しいタイプの資産運用事業を始める。東京大学文学部哲学科卒。

2016/11/09

【第76回月例勉強会】海外M&Aと買収後経営 ~JT海外たばこ事業展開を例にとって~

■講師:新貝 康司 氏(日本たばこ産業株式会社 代表取締役副社長)

■講演内容:
日本市場が成熟していく中で、海外展開の手段として多くの日本企業が、海外での企業買収を成長の手段として活用しています。JTにおいても海外たばこ事業は、1999年のRJRI社、2007年のギャラハー社と言った大型の買収を経て、現在では売上、利益ともグループ全体の過半を占める事業になりました。
買収の成功は、所期の目的を果たし買収時に支払ったプレミアムを超えるシナジー効果を上げることです。しかし、買収は異なる企業どうしの謂わば結婚であり、大規模な買収になるほど、日々予期せぬことが起きることを覚悟しなければなりません。したがって、この現実を直視し、被買収企業のガバナンスをはじめとして、買収後経営の課題に如何に対処するかが、買収の成功を左右すると言っても過言ではありません。
 今回は、日本たばこ産業株式会社 代表取締役副社長 兼 副CEの新貝康司氏をお迎えし、JTの海外たばこ事業でのM&Aと買収後経営を事例として取り上げ、海外企業買収成功への道のりを詳しくお伺いしました。

■講師略歴:
1980年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、日本専売公社(現JT)へ入社。1989年に渡米し、7年間に亘り、抗HIV薬Viraceptの共同開発等、米国新薬・バイオベンチャーとの数々の共同研究開発提携案件を発掘、推進。 1996年JT本社に戻り全社経営企画・財務戦略を担当後、財務企画部長、取締役執行役員財務責任者(CFO)を経て、日本、中国以外の海外たばこ事業の世界本社であるJT International S.A.にて、2006年 から英国ギャラハー社買収・統合を指揮。2011年6月より現職。2014年6月からリクルートホールディングス社社外取締役。

2016/10/05

【第75回月例勉強会】世界の取締役教育の現状と日本の課題 ~IMDグローバルボードセンターの取り組み~

■講師:高津 尚志 氏(IMD 北東アジア代表)
■講演内容:
会社法改正とコーポレートガバナンス・コードの制定による社外取締役の増加とともに、取締役会の実効性評価や社外取締役だけでなく社内出身の取締役を含めた「取締役教育」の重要性が高まっています。そこで今回は、経営幹部教育で世界トップクラスの評価を受けるスイスのビジネススクール・IMDに注目し、北東アジア代表の高津尚志氏にお話をうかがうこととなりました。  IMDでは、取締役会(ボード)のパフォーマンスやガバナンスに関する研究と教育を、過去35年以上にわたって積み重ねてきた実績があります。今回の講演では、IMDグローバルボードセンターが提唱する、長期的な組織の成功に資するボードを考える4つの柱からなる枠組み(①ひと、 ②情報アーキテクチャー、③構造とプロセス、④集団力学)を、事例とともにご紹介いただきます。 また、1977年から提供されてきた、世界的な定評のあるIMDの教育プログラム「High Performance Board」がどのように運営され、参加する世界のボードメンバーやボードの進化に貢献しているかについても、詳しくご説明いただきます。
■講師略歴:
企業幹部教育に特化したスイスのビジネススクール・IMDの日本・韓国・台湾市場責任者。1965年生まれ。高校時代にカナダ留学。早稲田大学卒業後、89年日本興業銀行へ。フランスの経営大学院INSEADに学び、パリに勤務。ボストン コンサルティング グループを経てリクルートに移籍。グローバル企業の経営理念の共有支援の経験をもとに、「感じるマネジメント」を編者代表としてまとめ、人と組織の専門誌「Works」の編集長を務めた。2010年、IMDに参画。ドミニク・テュルパン学長との共著に「なぜ、日本企業は『グローバル化』でつまずくのか」、「ふたたび世界で勝つために -グローバルリーダーの条件」。訳書に「企業内学習入門~戦略なき人材育成を超えて」(シュロモ・ベンハー教授 著)。桑沢デザイン研究所基礎造形専攻修了。

2016/09/08

【第74回月例勉強会】女性の活躍推進が日本経済の鍵

■講師:名取 はにわ 氏(特定非営利活動法人日本BPW連合会 理事長/元内閣府男女共同参画局長)

■講演内容:
少子高齢化に伴う労働力不足が現実のものとなってきた日本において、女性の活躍は国内外から強く求められています。しかしながら、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが毎年公表している世界ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)は、昨年も145か国中101位と、日本の女性の活躍は極めて低調です。 そこで今回は、男女共同参画社会の形成を推進されて来た名取はにわ氏をお迎えし、日本女性の学歴の低さ、OECDワースト3位の男女の賃金格差等、統計数字に基づき、日本の女性の現状と女性を活躍させない様々な要因を説明していただきます。また、一般に政策が遅れている分野ほど社会の関心が低く、さらに遅れてしまうという負のスパイラルがありますが、女性の活躍推進は、この負のスパイラルに陥っているといえます。ここからどうやって抜け出すかが今後の日本経済の鍵であるとの視点から、最近ようやく取り組みが進んで来た女性の活躍を推進する政策についても詳しく伺います。

■講師略歴:
1973年 東京大学法学部を卒業後、法務省に入省。1995年に内閣総理大臣官房男女共同参画室長・内閣審議官、1995年 第4回国世界女性会議(北京会議)政府代表団員。1997年 男女共同参画審議会設置法成立、1999年 男女共同参画社会基本法成立。同年、総理府日本学術会議学術部長、2001年 文部科学省生涯学習政策局主任社会教育官、2003年 内閣府大臣官房審議官(総合調整担当)、内閣府男女共同参画局長。2005年 第2次男女共同参画基本計画策定(閣議決定)、2006年退任。2007年 内閣府情報公開・個人情報保護審査会委員(国会同意人事)、2010年 同委員再任(国会同意人事)、2011年 内閣府情報公開・個人情報保護審査会会長代理、2013年に退任。現在、特定非営利活動法人日本BPW連合会理事長、国立大学法人電気通信大学監事、内閣府男女共同参画推進連携会議議員、東久留米市教育委員、防災委員、男女平等推進市民会議会長、東村山市男女共同参画推進審議会会長などを兼任している。

2016/07/21

【第73回月例勉強会】東芝問題と三様監査

■講師:安井 肇 氏(ジャパンビジネスアシュアランス顧問 兼 モルガンスタンレーMUFG証券顧問)

■講演内容:
東芝不正会計事件は、本邦資本市場に対する信頼を著しく傷つけました。資本市場への信頼が円滑な経済活動に必要なリスクマネーを呼び寄せるのに必要ですが、今後老大国化を回避しえない日本ではなおさらです。昨今のコーポレートガバナンス強化の動きの背後には、企業による健全なリスクテイクを後押しする役割があることはもちろんですが、上記のような問題意識もあるように思われます。  ところが、東芝不正会計問題では、内部監査、監査委員会監査、外部監査ともに機能しませんでした。「経営トップが関与している以上、その是正は事実上不可能」ともいわれましたが、昨年12月の金融庁による担当監査法人への処分理由をみる限り、かなり単純な検証作業がなされなかったことが判明しました。今回の勉強会では、上記のような問題意識の下で、不正に関するディフェンスラインとしての監査の役割とその連携のあり方等について、改めて検討しました。

■講師略歴:
1975年日本銀行入行、横浜支店長、考査局(現金融機構局)次長などを務め、2003年同行を退職して、中央青山監査法人へ入所、リスク管理関連のアドバイザリー業務に従事。2006年にあらた監査法人へ移籍後、2007年7月よりあらた基礎研究所長として監査法人をめぐる大きなトレンドに関する研究を行った。2013年7月より同法人顧問となり、翌8月より経済産業省主催「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係」プロジェクトに参加、いわゆる伊藤レポートの作成に携わった。2014年6月より滋賀銀行社外監査役、2014年7月よりジャパンビジネスアシュアランス顧問、2015年6月あらた監査法人顧問を退職し、翌7月よりモルガンスタンレーMUFG証券顧問。日本コーポレートガバナンスネットワーク監事、日本価値創造ERM学会理事なども務めている。

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

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