セミナー

2021年 月例勉強会

2021/12/15

【第128回月例勉強会】取締役会の実効性評価の現状と今後 ~外部専門機関の視点から~

■講師:小林 昭夫 氏(PwCあらた有限責任監査法人 パートナー/公認会計士 公認不正検査士)

■講演内容:

我が国の企業にとって比較的新しい実務である取締役会の実効性評価は、2015年のコーポレートガバナンス・コードで徐々にその意義が理解され、ノウハウが蓄積されつつあります。モニタリングボードとしての取締役会の機能を強化するためには、取締役会自らが実効性評価を深化させることに加え、その際には外部の専門家の視点を効果的に活用することが求められます。さらに今年(2021年)、コーポレートガバナンス・コードと同時に改訂された投資家と企業の対話ガイドラインでは「取締役会の実効性確保の観点から、各取締役や法定・任意の委員会についての評価が適切に行われているか」という文言が加筆されました。現状の取締役会について採点を行ったり、実効性があるかどうかを判断するだけではなく、現状の取り組みに対する評価・認識、提言や課題・問題意識の抽出、意識の共通点や齟齬・ズレの抽出などを通じ、取締役会を活性化するとともにその方向性を見いだし、実質的なアクションに結びつけることに意義があるのです。
そこで今回のセミナーでは、これまで複数の上場企業の取締役会の実効性評価を支援してきた経験から、その意義や効用について解説していただくこととなりました。また、開示状況の分析や英国をはじめとする海外の実務を参照しながら、今後の取締役会の実効性評価の深化の方向性について皆様方と一緒に考察しました。

■ 講師略歴:
30年以上に渡り国内・海外の上場企業に対する監査業務や会計アドバイザリー業務を提供している。エネルギー業界および関連の会計処理に精通している。コーポレートガバナンス強化支援チームのリーダーを務め、複数の大手上場企業のコーポレートガバナンス強化支援、取締役会の実効性評価支援等を実施するほか、コーポレートガバナンスに関連するセミナーや寄稿などの活動を行っている。また、上場企業の監査役等500名以上から構成される会員組織である「PwCあらたAudit Committee Network」の企画運営を担当。

2021/11/18

【第127回月例勉強会】コーポレートガバナンスが求める2つのサステナビリティ ~東証再編・CGC改訂の先にあるもの~

■講師:山田 英司 氏(株式会社日本総合研究所 理事)

■講演内容:
2022年4月に予定されている東証市場再編においては、プライム市場上場企業に対しては「より高いガバナンス水準」が求められることとなり、これを受けて本年6月にコーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表されました。本改訂では、取締役会の機能強化のため取締役の質量の強化が求められるとともに、サステナビリティやダイバーシティなど、監督のスコープも拡大します。
その中で、社外取締役の役割と責任の更なる強化と、取締役会のモニタリング機能の継続の点から「ボード・サクセッション」の体制づくりが大きな課題となっています。これら一連の流れは、米国・英国に範をとっていることは知られてはいるものの、米国・英国の現状は知られていないのが実情です。
そこで今回は『ボード・サクセッション』(中央経済社)の著者である山田英司氏を講師にお迎えし、企業のサステナビリティと取締役会そのもののサステナビリティについて考えてみたいと思います。米国、英国のガバナンス構造と比較しつつ、東証再編・コーポレートガバナンス・コード改訂の先にある、日本企業の今後のガバナンス改革の展望と課題について考察しました。

■ 講師略歴:
早稲田大学法学部卒業、University of Wales MBA修了、EU Business School DBA修了。建設会社の企画・管理部門を経て現職。現在は、グループ経営、M&A、経営管理などのリサーチ・コンサルティング業務を手掛ける。また、ベンチャー企業のCFO・監査役、大手機械メーカーの社外取締役を歴任するとともに、東京都や公正取引員会の審議委員もつとめる。著書として『ボード・サクセッション』(中央経済社2021)、『グループガバナンスの実践と強化』(税務経理協会2020)など。

2021/10/28

【第126回月例勉強会】これからの社外取締役に求められる役割とは ~ 米国での最新実務の現場と訴訟事例から ~

■講師:クリストファー・スチュードベーカー 氏(東京国際法律事務所 パートナー)

■講演内容:
日本におけるコーポレートガバナンス改革は、取締役会における(独立)社外取締役の比率を高めることに重点を置いてきました。これに伴い、独立した意見を提供し、企業活動を監視するという、社外取締役の役割はますます重要になって来ています。
そこで今回のセミナーでは、米国における最新の判例をもとに米国の動向を概観し、これからの社外取締役が知っておくべきこと、求められる役割と法律的な責任について考えることといたしました。州や連邦の法律や規制、裁判所の判決、取引所の上場要件及び規制当局の執行手続等から発展した米国の慣行を知ることは、日本企業においても、経営陣への助言や監視を行う上での社外取締役の役割を理解する有益な指針となります。また、日本の上場株式の4割近くを保有している海外投資家が、日本企業の取締役に対してどのような役割と責任を期待しているかを理解するためにも重要な観点であると考えられます。社外取締役のみならず、取締役会に関わる皆様に知っておいていただきたいこれらのトピックスについて議論いたしました。

■ 講師略歴:
東京国際法律事務所のパートナー。反トラスト法、米国訴訟全般、クロスボーダー紛争解決、集団訴訟、証券法、及びコーポレートガバナンス等幅広い分野で約15年以上の豊富な経験を持つ。Quantum Accounting株式会社の取締役。トムソン・ロイター誌で、証券訴訟分野の「New York Super Lawyer」(2016年~2020年)に選出。外国法事務弁護士(2021)、ニューヨーク州弁護士(2006)、ワシントン州弁護士(2004)。<著書>『An Overview of U.S. Class Certification Procedures & Proposed Reforms』(日本大学法学部比較法研究所のComparative Law誌33号、2016年)、『Recent Developments in U.S. & Global Securities Litigation』(日本大学法学部比較法研究所のComparative Law誌35号、2018年)、『ADRの概要と日本企業に関係するリスク』(共著、BUSINESS LAWYERS、2019年10月30日号)、『ADRに関する日本企業の裁判例』(共著、BUSINESS LAWYERS、2019年11月6日号)、『日系企業におけるディスカバリー対応の留意点』(共著、企業概況ニューズ、2020年1月1日号)、「サブプライム関連訴訟の現状と日本への示唆」(共著、週刊金融財政事情、2013年6月3日号)。

2021/09/16

【第125回月例勉強会】取締役会・監査役の機能不全が問われた企業不祥事 ~ 実例から考える取締役会の実効性評価と社外役員の要件 ~

コーポレートガバナンスの強化に向けた取り組みが進む中、依然として企業の不祥事は後を絶ちません。今回は、2名の専門家による実際の不祥事例の分析と解説を通して、取締役会の本当の実効性とは何か、これからの社外役員に求められるものは何かを議論しました。

【Session 1】
題目:企業不祥事の俯瞰的分析とコーポレートガバナンスの質向上への施策 ~守りと攻め、執行トップと社外役員双方の観点から~
講師:渡辺 樹一 氏(弁護士法人御園総合法律事務所 顧問/一般社団法人GBL研究所 理事/米国公認会計士・公認内部監査人・公認不正検査士)

新型コロナウイルスの世界的な流行、異常気象の頻発、地政学的リスクの高まり、ESGにかかわる社会的要請の高まり、第4次産業革命の始まり等、経営環境は、従来にない時間軸で急速に変化しています。経営環境に俊敏に対応しうる質の高い経営が求められる中、それを実現する源泉が「コーポレートガバナンスの質の向上」であると考えます。
今回のご講演では、2013年~2020年に調査報告書として公開された上場会社の企業不祥事、全322件の俯瞰的分析から得られる教訓や論点をもとに、今希求されるコーポレートガバナンスの在り方や施策について、執行トップと社外役員双方の立場から、攻めのガバナンス、守りのガバナンスの両面で考察し解説していただきました。

【Session 2】
題目:実際の不祥事例に見るガバナンスの課題
講師:樋口 晴彦 氏(警察大学校 人事総合研究官/危機管理システム研究学会 理事/博士(政策研究))

ガバナンスのモニタリングモデルに従って、社外役員の要件を定義した「樋口3要件」を解説していただきました。
1) 経営者からの独立性:いざとなれば経営者の首を切れるように、経営者との距離を保つこと
2) 経営に対する監視能力:経営上の問題点を認識できるように、会計知識などのスキルを持つこと
3) 職責の自覚:社外役員という孤独な立場にひるまず、自分の職責を果たす強い気持ちを持つこと
また、それぞれの要件について、東芝事件・関西電力事件・スルガ銀行事件・オリンパス事件・LIXIL事件等の不祥事例に基づき、社外役員の機能を果たすための具体的な留意点を解説した上で、「社外役員に不適当な人物像(樋口基準)」を提示していただきました。

2021/06/16

【第124回月例勉強会】サイバーセキュリティリスクと取締役会の責任 ~サプライチェーン攻撃と対策の実態~

■講師:関原 優  氏(三井物産セキュアディレクション株式会社 コンサルティングサービス事業本部本部長 兼 公共事業部 部長)

■講演内容:
今やサイバーセキュリティは全社的リスクマネジメントの問題となり、経営戦略や事業の継続に関わる重要課題となっています。米国では以前より取締役会の重要アジェンダとして必ず取り上げられていましたが、我が国においても、経産省からサイバーセキュリティ経営ガイドラインが公表されるなど、取締役会の責任が問われる時代になりました。
この背景には、サイバー攻撃の高度化・巧妙化に伴い、日本国内においても深刻な事例が多発していることにあります。特に昨今、セキュリティ対策が脆弱な国内外グループ企業や取引先などに攻撃を仕掛け、それを踏み台にターゲットである大手企業に侵入する「サプライチェーン攻撃」のリスクが増大しています。規模や業種を問わず、あらゆる企業がサイバー攻撃の脅威に晒され、さらには信用失墜や損害賠償のリスクを抱える可能性があるのです。
そこで今回は、取締役が理解しておくべきサイバーセキュリティリスクについてセミナーを開催いたしました。日本国内有数の情報セキュリティ専門会社である三井物産セキュアディレクション株式会社より、長年、大企業グループなどへのコンサルティングで活躍されている関原優氏をお招きし、近年のサイバー事故事例と対策の実態をわかりやすく解説していただくほか、サプライチェーンのセキュリティリスクとガバナンス、経営者が今後検討すべき課題についてもご説明いただきました。

■講師略歴:

三井物産にて情報セキュリティ専門会社である三井物産セキュアディレクションの設立に携わる。15年以上にわたり、IT・サイバーセキュリティのサービス事業に従事し、SOC構築、サイバー攻撃分析、疑似攻撃によるWebサイトやネットワークの診断、自社SIEMなどのセキュリティツール開発、官公庁やグローバル企業等に対するセキュリティコンサルティングなどを手掛ける。現在は、150名超のセキュリティコンサルタントおよびエンジニアを率いて、顧客のセキュリティ対策を支援している。
【著書】 訴訟・コンプライアンスのためのサイバーセキュリティ戦略(NTT出版)【特許】 特許番号_第5955475号 発明者 概要:自己多重起動抑止特性を利用したマルウェア感染防御・無効化技術/特許番号_第5996145号 発明者 概要:暗号化時のファイル特性を利用したランサムウェア検知・防御技術/特許番号_第6219550号 発明者 概要:ファイルマッピングによる暗号化に対するランサムウェア検知・防御技術

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一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

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