セミナー

2022年 月例勉強会

2022/06/14

【第133回月例勉強会】サステナブルファイナンスを 味方につける ~脱炭素時代のESG経営~

■講師:竹ケ原 啓介 氏(株式会社日本政策投資銀行 設備投資研究所 エグゼクティブフェロー 兼 副所長、金融経済研究センター長)

■講演内容:
企業の非財務的な価値に着目する「ESG投資」のメインストリーム化が進んでいます。これを受けて、EUタクソノミー、SDGs、TCFD、TNFD、ISSBなど、俗に「アルファベットスープ」と呼ばれる略語が溢れ、新聞を開くと嫌でも目に飛び込んでくる状態ですが、その一方で、かつてブームとなった企業の社会的責任(CSR)や社会的責任投資(SRI)との違いがよく分からないなど、困惑の声も聞こえてきます。
そこで今回は、ESG投資を巡る議論を整理し、企業に求められる対応を皆様と一緒に考えたく、環境金融の第一人者である日本政策投資銀行の竹ケ原啓介氏にご登壇いただきお話を伺いました。重要なESG課題が何かは、本来、企業によって異なりますが、現在、多くの企業に共通のテーマになっている気候変動を中心に議論をいたしました。
気候変動に係る任意の情報開示フレームワークであるTCFDが4本柱の一つに「ガバナンス」を掲げているように、ESG経営はコーポレートガバナンスを考えるうえでも重要なテーマです。取締役会の議題として取り上げられる機会が増え、社外取締役としての知見が問われるようになった今、理解を深めるための有意義なご講演でした。

■ 講師略歴:
1989年 一橋大学法学部卒業。同年 日本開発銀行入行。日本政策投資銀行 フランクフルト首席駐在員、環境・CSR部長、産業調査部長などを経て、2017年に執行役員 産業調査本部副本部長 兼 経営企画部サステナビリティ経営室長。2021年より設備投資研究所 エグゼクティブフェロー 兼 副所長(現職)。経済産業省、環境省、文部科学省、内閣府、内閣官房、国土交通省の委員会委員等を歴任するほか、(一財)持続性推進機構理事、(一社)グリーンファイナンス推進機構審査委員会委員、長野県飯田市再生可能エネルギー導入支援審査会委員、法政大学人間環境学部兼任教員も務める。著書に「ESG金融実践のためのSDGs入門講座」(株)きんざい 2019年(共著)、「再生可能エネルギーと新成長戦略」エネルギーフォーラム 2015年(共著)、「気候変動リスクとどう向き合うか」(一社)金融財政事情研究会 2014年(共著)など多数。

2022/05/19

【第131回月例勉強会】機関投資家・アクティビストとの対話 ~社外取締役の立場から~

■講師: 田村 俊夫 氏(一橋大学大学院経営管理研究科 教授)

■講演内容:
ガバナンス改革の進展の中で、近年、日本でもアクティビストや機関投資家との対話の重要性が飛躍的に高まっています。従来、株主との対話は経営陣の専管事項と考えられてきましたが、最近では株主が社外取締役との直接対話を求める動きが強まっており、コーポレートガバナンス・コードでも社外取締役もエンゲージメントの当事者であるべきことが明記されています。株主との対話への対処を誤ると、株主による経営不信任にも直結しかねません。社外取締役としては、株主がなぜ社外取締役との対話を求めるのかを理解したうえで、経営執行でない立場からの適切なスタンスを踏まえて対応する必要があります。そこで今回のセミナーでは、海外のアクティビストや年金基金などの機関投資家の考え・動向に詳しい一橋大学の田村教授をお迎えし、皆様と一緒にこれらの課題について考えることといたしました。株主が懸念を抱く経営課題や近年重要性を増すESG問題などについて、社外取締役として対株主・対社内の両面で如何に対処するべきかにつき、参加者の皆様と議論しました。

■ 講師略歴:
1986年東京大学法学部卒、日本興業銀行入行。1989年 ハーバードロースクール修士。ニューヨーク州弁護士登録。米国弁護士事務所、世界銀行グループIFC投融資担当官、みずほ証券投資銀行第7部長等を経て現職。M&A、企業分析、コーポレートガバナンスを専門とする。著書:『MBAのためのM&A』(有斐閣、2009年)、『コーポレートガバナンスと企業・産業の持続的成長』(共著)(有斐閣、2018年)ほか。論文:「アクティビスト・ヘッジファンドと企業統治革命」(証券アナリストジャーナル、2014年)、「日米エンゲージメントの新潮流」(月刊資本市場、2018年)ほか多数。

2022/04/27

【第131回月例勉強会】持続的価値向上のために ~日本企業が直面している真の課題~

■講師:大場 昭義 氏(日本投資顧問業協会 会長)

■講演内容:
我が国のガバナンスの仕組み作りは、コーポレートガバナンス・コードの再改訂に代表されるように、確実に進化してきました。しかし実務の現場では原則主義の理念から離れて、コンプライを目的とする傾向が広がりつつあります。加えて期待されたプライム市場の創設は、東証一部上場企業の過半がスライドすることにより、こちらも当初の目的からの乖離が懸念されています。これらの新たな仕組みは、いずれも持続的価値向上のための必要条件であるものの、運用次第では常に形骸化のリスクを内包しています。一方我々は取締役会の実効性発揮や、イノベーション創出力を持つ経営陣幹部の確保・育成などを、持続的価値向上の十分条件として今こそ強く再確認する必要があります。
そこで今回のセミナーでは、日本投資顧問業協会の大場会長をお迎えし、皆様と一緒にこれらの課題について考えることといたしました。仕組み面におけるガバナンス改革が先行する中、取締役や経営陣幹部が本来の目的を見失わず、直視すべき真の課題を洗い出し、その解決策を導き出すための役割や責任について議論しました。

■ 講師略歴:
みずほ信託銀行(株)常務執行役員、東京海上アセットマネジメント(株)代表取締役社長を経て2017年6月日本投資顧問業協会 会長就任。金融庁「スチュワードシップコード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」メンバー、経済産業省「コーポレートガバナンス・システムのあり方に関する研究会」委員、環境省「ESG金融懇談会」委員。2013-2017年日本証券アナリスト協会会長。2016年8月より日本公認会計士協会 理事。早稲田大学政治経済学部卒。「資産運用ビッグバン」(井手正介/大場昭義著、東洋経済新報社刊 1997年)他著書多数。

2022/03/10

【第130回月例勉強会】サステナビリティ時代の企業不動産とファシリティマネジメント ~オフィス・ファシリティマネジメントの向かう方向~

■講師:似内志朗氏(ファシリティデザインラボ 代表)

■講演内容:
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、リモートワークが浸透し、働き方改革のみならず、オフィスのあり方も大きく変わりました。企業はオフィス施設や店舗、製造設備など、所有するファシリティの総合的な見直しを余儀なくされることとなりました。
また、SDGsの推進やパリ協定での決定を背景に、企業活動からのCO2排出量の削減も急務となり、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った積極的な情報開示を迫られるようになりました。CO2排出削減のためにどのような具体的な対策を取り、アクションを起こすかは喫緊の課題となっています。サステナブル経営の観点からは、グリーンビル認証やグリーンファイナンスの活用もますます広がると考えられます。
このような背景のもと、人事・財務・情報システムに加え、第4の経営資源として注目されているのが「ファシリティマネジメント」です。企業の物的資産であるファシリティを如何に効率的に管理・運用し、その価値を最大化するか、また、如何に環境への負荷を最小化するかは企業の存続に関わる課題として、取締役会においても重要な論点となることは必須です。そこで今回は、この分野でのパイオニアとして戦略的ファシリティマネジメント導入に関与されてきた似内氏をお迎えし、サステナビリティ時代の企業不動産とファシリティマネジメントについて解説いただくこととなりました。大きな転機を迎えつつあるこの時代、都市・建築・オフィスはどこに向かうのかを議論しました。

■ 講師略歴:
ファシリティデザインラボ代表、株式会社ヴォンエルフ シニアアドバイザー、株式会社イトーキ 社外取締役。複数企業のアドバイザー(経営、不動産開発、CRE、ESG、ユニバーサルデザイン分野)。筑波大学客員教授・東洋大学非常勤講師。公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会 理事・フェロー・調査研究委員長・SDGsタスクフォースリーダー。21世紀金融行動原則環境不動産WG共同座長。社団法人グリーンビルディングジャパン運営委員。【略歴】1958年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業、ロンドン大学(UCL)バートレット建築校大学院修了(建築ディプロマ取得)。1984年郵政省入省。主に建築・不動産分野。郵政省・日本郵政にて建築設計(郵政省保有施設全般の設計多数、ゼロエネルギー建築企画・設計)、ファシリティマネジメント(CRE/FM組織の立上げ)、新規事業開発(公社化・民営化後の新規事業開発・企業提携、上海万国博出展の統括)、不動産開発企画(JPタワー等の保有不動産開発の統括)等を担当。2019 年退職後、現職。一級建築士(JIA登録建築家)、WELL AP、認定ファシリティマネジャー。

2022/01/24

【第129回月例勉強会】これからの ESG 経営に求められること ~非財務情報と企業価値形成~

■講師:小木曽 麻里 氏(SDG インパクトジャパン CEO)

■講演内容:
気候変動対策を協議する COP26 がグラスゴーで開催され、環境問題への意識が高まった 2021 年。我が国におい ても、2030 年までの CO2 排出量削減目標を 2013 年度比で 46%減とする新目標が発表されました。 ESG 投資の順調な拡大に伴い、企業にも ESG の開示やパーパス経営が求められるなど、非財務情報の取得と開示 により大きな圧力がかかることが予想されています。これに加え、本年度もエクソンモービル等の株主総会でアクテ ィビストの推薦した環境科学者を含む社外取締役3名が CEO の反対にも関わらず選ばれるなど、環境アクティビズ ムも今後さらに活発化すると考えられます。 非財務情報を財務情報に組み込む動きはまだ始まったばかりですが、昨今の気候変動の問題が企業の経営に及ぼす 影響を鑑みると、財務分析への組み込みが必須であることは明白です。今後、取締役会におけるサステナビリティ議 論を更に深めるためには、環境問題に加え、ダイバーシティや女性の活躍、人権問題などの多様な非財務情報が、企 業価値形成の重要な要素となることを理解しておく必要があります。 今回は、長年にわたり SDGs の実現に関与されている小木曽麻里氏をお迎えし、企業のサステナビリティや IR 活 動の現場でのご経験を踏まえて解説していただきました。これからの ESG 経営に何が求められるのか、 取締役会でどのように取り組むべきかを議論しました。

■ 講師略歴:
国際機関、財団及び戦略コンサルタントとして、ビジネスを通じた SDGs の実現に携わる。世 界銀行にてインフラ、資本市場担当を経て、世界銀行グループ投資保証機関(MIGA)東京事務 所長。その後ダルバーグ日本代表、笹川平和財団営業企画部長、ジェンダーイノベーション部 長。サステナブルファイナンス(インパクト投資)についてはその黎明期より携わり、2017 年に当時アジア最大規模のインパクトファンドを創設した。また、ファーストリテイリングで はダイバーシティのグローバルヘッド、人権事務局長、サステナビリティ広報部長を務め、そ の後日本におけるサステナブルファイナンス推進のため 2021 年に SDG インパクトジャパンを 設立。共同創業者兼 CEO として ESG 投資の推進及びインパクトファンドの設立運営に携わ る。東京大学経済学部卒、タフツ大学フレッチャー校修士(環境、金融)。国際協力機構海外投 融資リスクアドバイザー、SMBC 日興證券 ESG アドバイザリーボード、明治ホールディング ス ESG アドバイザリーボード、W20 日本デレゲートなどを務める。2016 年に Forbes「世界で 闘う日本人女性 55」に選出。2021 年日経 SDG フォーラム基調講演他講演多数。

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

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