新生SBI銀行TOBの怪 門多 丈
SBI新生銀行のTOBは、長銀の公的保有株式(預金保険機構と整理回収機構が保有)を買い戻すための「奇策」である。
SBI新生銀行のTOB意見表明書(「意見書」)では、TOB後の非公開化の目的について「(上場会社のままでは)短期的には当行の少数株主にとって、その意義が容易に汲み取りにくい施策(例えば、当行での利益最大化に時間を要する先行投資や、当行の成長の実現に時間を要する SBIHD グループとの連携に関する施策等)を積極的に実施することが難しいため」と説明している。今までもSBIグループは同行の50%超を保有していたのでありこれでは説明にならない。これまでの銀行経営が怠慢であったということになる。
社外取締役と外部識者でなる特別委員会では、補足意見と反対意見を各一名の委員が述べている。いずれも「公的資金の返済の要回収額と今回の買付価格との間に実質的平等性を確保できるか」とし、具体的にはTOB株価2800円と公的資金回収の目標株価とされる7450円とのギャップを指摘している。TOBのスクイーズアウト条項で少数株主はTOB株価で強制買取をされるが、2800円ではPBRは0.6である。SBI新生銀行を清算すると分配されるはずの金額(簿価)の6割しか少数株主には還元されないこととなる。株主権に関する重要な問題であり、特別委員会はこれにつてもフェアネス・オピニオンを得る必要があったのではないか。
公的保有の株式を買い戻す際の買い戻し価格と今回のTOB価格との差は、「意見書」でも述べられているように、TOB後に増加した企業価値を反映したものであるべきであり、SBI新生銀行の株式非公開後も、SBI新生銀行、政府双方にその説明責任は残る。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2023年5月29日号「複眼」欄に投稿したものです。
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