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女性取締役を3割に? 門多 丈

2023年07月21日
政府の「女性役員3割」政策は、企業内で女性が活躍、貢献できる環境と制度づくりの取り組みの上で議論すべきである。

政府は「東証プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を、2030年までに30%以上にする」方針を示し、数値目標を入れた規定を2023年中に東証場規則に設ける予定とのことである。未だポリティカル・メッセージの感が強く、まずは各企業の取締役会が指名委員会の機能を充実し、多様性やスキルマップについて議論する中で主体的に取り組むことが重要である。 

日本の女性役員登用の少なさを懸念し、このような政府方針を「下駄をはかせる」方針として評価する人がいる。「下駄をはかせる」コストを誰が負担すべきか、「下駄をはかせられた」と見られる当人の心理的なプレッシャーも無視できない。企業がこのような「割り当て」(quota)の達成を急ぐあまり、女性の社外取締役で員数揃えを行うとすれば、社内の人材育成や起用には必ずしも繋がらない。 

筆者の経験では、女性の社外取締役で取締役会の実効性向上に貢献している方には、外資系で経営幹部や部長を経験した方が多い。ジョブ・ディスクリプションが明確で、業務の目標を厳密に設定し、執行の権限が明確に与えられ、評価も適切に行い人材を育てる姿勢の環境で働いてきた人材である。日本企業でもこのような枠組みを作り、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンの環境をしっかり整え、まずは優秀な部長や執行役員を育成するのが、社内の女性取締役を輩出する王道と思う。「女性役員」のquotaに執行役員や監査役を含む方針の方が、現実的で効果的と思う。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2023年6月29日号「複眼」欄に投稿したものです。


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