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不祥事と監査役の「黙過」 門多 丈

2023年11月14日
最近の重大な不祥事について、監査役が内部統制の観点から問題を指摘していたとは思えない。当事者意識を持って、現実を直視して逃げずに対応していくことがガバナンスの要諦だ。

損保ジャパンの役員会で、白川社長はビッグモーター(BM)の不正はクロであるとしながら、ビジネス(事故車のBMへの入庫)再開を決定した。過大な補修料金を取られた保険契約者の被害を一顧だにしない、自社の利益本位の決定である。同社の「不正事案に関する社外調査委員会の中間報告書」によると、この決定が正式会議体でない役員会でされ監査役も同席していない。経営上の重要会議に監査役が出席していないのは、コーポレートガバナンス上の大問題である。同席していれば経営に関する重要な決定として取締役会に「報告」すべきと勧告していたはずである。再発防止策には、このような内部統制の不備への改善策を含むべきである。 

ジャニーズの性的虐待事件は言語道断である。加害者が生きていれば、米国では刑事事件になることは明らかである(2年前に米国では4人の少女に性加害を働いた30代の男に懲役275年が言い渡されている)。国連人権理事会など海外で大問題になって動いた新聞やテレビなどのマスコミの責任は重い。マスコミはそのような疑惑を薄々知っていたはずである。新聞の「社説」などで「大いに反省」と言っても、責任の取り方としては不十分だ。各社は「報道倫理委員会」で調査し、何が問題であったのか、今後はどうするのかの説明責任がある。監査役は経営陣に対し、このような対策を勧告すべきである。 

関西電力が主導して行った電力カルテル事件では、関西電力は公正取引委員会に「自主申告」して課徴金を免れたが、中国電力など3社は計750億円を徴収される。関西電力を含め各電力会社の監査役は、このような大規模なカルテル行為に気がついていなかったのであろうか。課徴金を取られた中国電力など3社では、株主代表訴訟による役員の責任追及が監査役に求められることとなろう。


※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2023年10月24日号「複眼」欄に投稿したものです。

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