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MOM方式の採用は慎重に 門多 丈

2023年10月04日
買収防衛策は株主権に関する重要なものであり、株主総会での決議は、MOMではなく「敵対的買収者」も決議に参加する普通決議で行うべきと考える。

コスモ石油は買収防衛策議案について、大株主などを株主総会の議決に参加させない「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(MOM方式)を採用した。この防衛策はシティインデックスイレブンスなど(「村上ファンド」)の大株主以外の株主に新株予約権を無償で割り当てることで、甚大な希薄化をもたらすものであり、この議決には村上ファンドも参加させるべきであったと思う。 

コスモ石油は今年の1月の取締役会で、「大規模買付行為等趣旨説明書」なしでのコスモ石油株の「急速な大規模買い付け」については、村上ファンドに対し買収防衛策で対抗することを決議していたが、株主総会でこの追認を求めたのである。村上ファンドは同社の株式を20.01%まで取得していたが、コスモ石油経営陣は村上ファンドと真摯に対話し対応してきてきた。村上ファンドは同社の将来戦略の重要な柱である再生エネルギー事業子会社の分離・上場などに固執し、同社の将来の企業価値の形成や株主共同の利益に配慮していているかは甚だ疑問ではあるが、コスモ石油の取締役会が株主総会での買収防衛策をMOM採決としたことは疑問だ。今回の株主総会でのMOM方式での買収防衛策についての反対投票を勘案すると、株主全員による投票であった場合は買収防衛策は過半数で否決された可能性が高い。株主平等の権利の侵害にもなりかねない「買収防衛策」議案については、慎重なステップを踏むべきと思う。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2023年8月21日号「複眼」欄に投稿したものです。


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