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社外取締役のインサイダー疑惑報道について 安田 正敏

2010年11月05日
西友の一人の社外取締役(2007年当時)によるTOBに関するインサイダー取引疑惑が報道されましたが、この事件を「社外」取締役否定の方向に向けるのではなく、社内、社外を問わず会社役員がその責任の重さをもう一度かみ締め、統制環境を見直す機会にしていただきたいと思います。
本日(11月4日)の朝日新聞の一面トップに「西友元社外取締役を調査」「監視委 インサイダー容疑」という見出しの報道記事が載っています。これによると、2007年10月に実施された大手スーパー西友の株式公開買い付け(TOB)に際して西友の一人の社外取締役(当時)がTOBに関するインサイダー情報をもとに家族を巻き込んで西友株の売買を行い総額1千万円ほどの利益を上げていた疑惑があり現在調査中ということです。

当研究会では勉強会やブログなどを通じてコーポレートガバナンスにおける社外取締役の重要性と必要性を繰り返し主張してきただけに、この社外取締役のインサイダー取引疑惑の報道は誠に残念に思います。
懸念されるのは社外取締役否定派から「それみたことか」という議論が起こりかねないということです。「社外であるということ=会社から独立した立場で会社の経営を監視できるという利点につながる」という論理が、「社外であること=会社への関与と責任感の薄さ」という論理に負けることがあってはなりません。インサイダー取引は、社内外を問わず会社のインサイダーそのものである取締役、監査役がもっともしてはいけないことのひとつであることは言うまでもありません。調査の結果を待たねばなりませんが、筆者は、当時の西友の取締役会の統制環境がどのようなものであったのかということに強い関心を持ちます。なぜならばこのような事件の起きる背後には、多くの場合事件の起きる可能性を醸成させる土壌があるからです。その意味で、今回の報道疑惑を「社外」取締役否定の方向に向けるのではなく、社内、社外を問わず会社役員がその責任の重さをもう一度かみ締め、統制環境を見直す機会にしていただきたいと思います。

(文責:安田正敏)

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