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中国への日本進出企業は大丈夫か 門多 丈

2010年10月04日
尖閣諸島沖での漁船衝突事件への中国、日本、米国政府の行動は不可解だ。政治・外交の世界での不条理とも言える展開である。これらの事態は中国への進出日本企業の潜在的なビジネス・リスクを示唆する。
尖閣諸島沖での漁船衝突事件への中国、日本、米国政府の行動は不可解だ。中国は厳密に事実関係に配慮することもなく、突然領土主権を主張し19世紀的の覇権主義的な動きを取っている。日本政府は日中関係にクリティカルな問題にもかかわらず、政治的な考慮をせずに検察の現場に判断を任せた。また「領土問題はない(解決済み)」と言うだけで、今回の中国の一方的な主張に効果的に対応していない。米国も今回の事件を南方諸島問題の中でとらえ、シーレーン問題にも繋がりうるアジアの安全の緊急の問題としては動かず、中国との政治・経済問題を配慮し沈黙を保っているだけである。

政治・外交の世界での不条理とも言える展開であるが、今回の事態は中国への進出日本企業の潜在的なビジネス・リスクを示唆する。中国は未だ法治国家としは疑問があり、中国に進出し操業する日本企業は突然不公正な業務停止や財産没収を受ける可能性がある。フジタ社員の拘束にも見られるような、日本からの派遣社員の安全問題も想像される。今回のレアメタル輸出のサボタージュは、原材料の輸入や製品輸出に関する貿易制限のリスクを意味する。進出企業の知財の保全や税務面(二重課税、移転価格、配当制限など)で公正な扱いを受けることができるのかの疑念も深まる。

中国での雇用面での不安定さも増している。今年の春に連発した日本の進出企業での労働争議はその象徴である。不動産高騰で住宅購入が困難となっている労働者の不満対策として、中国政府の賃金上昇を容認する考えがこの背景にはあったとも言われている。

中国政府は今回の対応で惹き起こされた海外の企業経営の不安や懸念に真摯に耳を傾けるべきである。中国が今後も高度の成長を達成し国民生活の向上を国として目指すならば、海外の資本、経営の知恵、技術を積極的に取り入れることは国家的な課題であるはずである。そのためには中国への進出企業のビジネス環境を公正で透明性の高いものとする明確な姿勢が求められている。この間の日本政府の動きを見る限り、中国に進出した日本企業を日本政府が非常事態に際して効果的に守ってくれるとは思えない。日本がグローバル化を国家戦略とするならば、日本企業の海外での円滑なビジネス展開の環境つくりに責任あるコミットをするべきである。

(文責:門多 丈)

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