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コーポレート・ガバナンス:日本の常識、非常識 門多 丈

2010年09月19日
株主総会への株主による取締役推薦の規定は今後活用すべきである。会長とCEOの兼任はコーポレートガバナンス上の問題があり、グローバルにはこれを規制する動きが活発化している。
1) 株主総会への取締役候補の提案

ジェイ・ユーラス・アイアール(株)マネージング・ディレクターの高山与志子様が世界最大のコーポレートガバナンスの団体であるICGN(International Corporate Governance Network)の理事に選任された。長年IRやProxy (株主総会議決行使)の関係のコンサルティング業務を通じて、日本のコーポレートガバナンスの向上に尽力されてきたことが評価された結果でもある。

先日高山様と面談した際に、主要株主の取締役推薦を容易にする米証券取引委員会(SEC)の新規定が話題となった。具体的には3%以上の株式を3年以上保有する株主が推薦する取締役候補者も株主総会の招集通知に載せることを求めるものである。高山様からはこの規定では日本の方が進んでいるとの指摘があり、不明を恥じながらこの点を調査した。確かに会社法305条で、議決権の保有割合または数(100分の1とか300個とか)、保有期間(6ヶ月)の要件はあるが株主総会の8週間前までに招集通知に記載するように請求できるとの規定が定められている。高山様によると日本では規定はしっかりあるが、株の持ち合いの状況あり上手く機能していないとの指摘もあった。日本の大企業でも実際は経営者が取締役会に次期取締役候補を諮り、取締役会が株主総会に提案することになっているが、この慣行を破るには今後注目すべき規定と思った。

2) 会長とCEOの兼任

欧米では会長とCEOの兼任を認めない考えが徹底してきている。経営の業務執行を監督する会長(取締役会議長)と業務執行の最高責任者であるCEOが兼任するのは不具合であるとの考えである。日本の場合社長を退任しても会長として取締役に留まり代表権を持つことも多い、また社長が取締役会の議長を勤める場合も少なくない。

先週CFAジャパンと青山学院ビジネス・スクールのジョイントカンファレンス「グローバルな視点から見た日本企業のコーポレート・ガバナンス」が開催された。そこでスイスのビジネス・スクールIMDのスチュワート・ハミルトン名誉教授の講演を聞いた。リーマン、AIGの破綻などを教訓にして、今後のコーポレートガバナンスのあり方を考えるテーマの興味ある講演であった。講演の括りとして教授は「会長とCEOの役割を分割する」「CEOは会長に昇格させない」「監査委員会の役割強化」などを提案されたが大変示唆に富むものと思う。

バーゼルの銀行監督委員会が今春発表した銀行のコーポレートガバナンス報告書の中では指針として「(金融機関の)取締役会の議長は社外の独立役員が勤めるべし」と出ている。「社外役員には経営や業務が分からない」と発言する企業経営者が少なからずいる日本のコーポレートガバナンスの常識は、このような点ではかなりグローバルには非常識になっていることを自覚すべきではないか。

(文責:門多 丈)

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