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振興銀ペイオフ:金融庁には重大な責任 門多 丈

2010年09月13日
今回の振興銀ペイオフの発動では、預金者の自己責任のみならず金融庁の監査・検査責任も問うべきではないか。預金保険機構のペイオフ管理の責任は重大であり、振興銀の旧経営陣の刑事訴追の義務もある。
振興銀にペイオフが発動された。事業金融の新しいビジネス・モデルを掲げて発足した銀行がペイオフの第一号となるのは悲劇だ。破綻の原因について不良債権の貸倒引当金の不足と言うが、商工ファイナンスの債権二重譲渡の訴訟で敗訴したことが引き金である。

ペイオフについて預金者の自己責任のみで論ずるのは不十分と思う。今回の事態では金融庁の監査・検査責任の問題を明らかにすべきである。その過失が明白な場合は1千万円超のお金を預けペイオフで預金を一部カットされた人達(約3500人いるといわれる)も行政訴訟などで不服を申し立てることもできると思う。この間の振興銀の機関銀行化(中小企業振興ネットワークを使っての融資活動やその中での迂回融資)、利害相反活動(融資先に振興銀の増資を引き受けさせる)、預金保護を売りにした高利での定期預金募集活動、などの状況から考えれば金融庁の監督・検査の失敗は明らかである。振興銀が実態はノンバンクであり、また内部では木村元会長がワンマンで取締役会や執行役員会が機能していないことなどは「リスク・フォーカス」の監査・検査を行っていれば見抜けたことではないか。

預金保険機構(預保)のこれからの責任も重大だ。今回のペイオフは預保による「預金支払い方式」ではなく、振興銀の預金払い戻しに対する「資金援助方式」である。6000億円の預金からペイオフで保護されないと言われる460億円を引いた金額の(定期)預金の解約が殺到するという未曽有の事態もありうる。この払い戻しに対応に不手際があれば「取り付け騒ぎ」となる。

振興銀の資産の切り分けも難問だ。適資産と不適資産に分けることや、健全な貸付先への
ファイナンスをどう円滑に続けて行くかも簡単な仕事ではない。今後は振興銀の全ての資金繰りを預保が面倒をみることとなるが、1800億円とも言われる債務超過の振興銀への巨額の「資金援助」(理論的には最大5500億円)は当初から不良債権化必至のファイナンスである。この「資金援助」から起こる損失は預金保険で賄えばよいと簡単に考えるべきではない。預金保険料として預金者の負担する資金が原資であるわけであり、その是非について公の意見を徴すべき性格のものと思う。その際は上述の金融庁の監査・検査責任もあわせて議論すべきではないか。

預保には経営責任追求の一環として旧経営陣の在職中の職務の執行状況を調査し、民事上の損害賠償請求や関係機関への刑事告訴・告発などの責任追及を行う義務もある。

(文責:門多 丈)

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