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監査役の任期について 安田 正敏

2010年08月11日
監査役の任期が4年ということは、株主の監査役に対する意思表明が4年に一度しか出来ないことになり長すぎはしないかという機関投資家サイドからの意見があります。しかし、株主の立場からすれば、むしろ監査役候補の指名を社長から独立した機関によって行うことを義務付けることのほうがより意味があることだと思います。
8月5日、企業年金連合会の第36回コーポレートガバナンス推進会議に出席させていただきました。今回は「2010年6月株主総会シーズンを振り返って」というテーマのもとに、企業年金連合会年金運用部コーポレートガバナンス担当部長の木村祐基氏とガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン株式会社代表取締役の小口俊朗氏でした。それぞれに興味深いお話でしたが、ここでは、木村氏が講演の最後で提案された、株主総会期間の延期と監査役任期の短縮という二つのうち、監査役任期の短縮について考えてみたいと思います。

木村氏の主張の根拠は、現在の会社法で定められている4年という監査役の任期は、監査役の選任に対する株主の議決権行使が4年に1回しかできないということを考えると少し長すぎはしないかということです。たとえば2年に短縮してはどうかという意見です。木村氏によればこの意見は監査役協会からは猛反発を受けているということです。

監査役の任期が4年という長い期間になった主たる理由は、会社法では監査役は株主総会において選任されることになっているものの、実質的には監査役の選任が社長によって行われ、株主総会はその追認という企業社会の実情を考えた時、社長の影響力から独立して監査役の機能を果たすにはそのくらいの任期が保証されている必要があるということだと思います。

株主が監査役の選任に対して関与できる機会を多くすることによって、コーポレートガバナンスに対する株主の監視をより強化できるという考え方は理解できますが、そのためには監査役候補の指名が社長ではなく指名委員会のような独立した機関でなされることが前提になっていないと監査役の独立性を保証することは難しいと思います。

一方、監査役に対する株主の異議申し立てという観点からすれば、会社法は第339条で「役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議により解任することができる」としており、4年待たなくても株主はこの条文で監査役(上記役員の中に含まれる)に対する拒否権が保証されています。

これらを考慮すれば、「監査役の任期短縮」という考えは、あまり説得的な理由があるとは筆者には思えません。株主の立場からすれば、むしろ監査役候補の指名を社長から独立した機関によって行うことを義務付けることのほうがより意味があることだと思います。また、任期についていえば、同じ監査役が2期8年務めることが独立性の観点から妥当かどうかという問題のほうがより重要であると思います。

(文責:安田正敏)

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