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役員報酬の個別開示に思う 門多 丈

2010年07月09日
1億円以上の役員報酬の開示はガバナンス面では前進であるが、金額だけではなく報酬の内訳が分からないとフェアな議論は難しい。外国人役員の報酬について「日本でがっぽり稼ぐ」と批判する見方があるが当たっていない。
今年から導入された1億円以上の役員報酬の開示は各企業の特徴や事情なども分かり、いろいろな意味で興味深い。ただ報酬の内訳、具体的には固定、業績連動、ストックオプション、退職金見合いなどの項目別の内訳が分からないとフェアな議論は難しいと思う。

外国人役員の名前も含まれていて、これについて「狩猟民続が日本でがっぽり稼ぐ」とコメントする報道もある。国際的な基準での貢献や専門性に対する対価と思われ、これが「市場価格」と考えるべきではないか。「社長より高い報酬」と批判するのではなく、日本人の「平取」(ひらとり)でそのように処遇される人材が出ていないことを議論するべきではないか。

赤字企業の経営者が高額報酬を受け取っているとの批判がある。確かに何年も連続して赤字の会社の場合は議論がありうる(米国でも倒産近くになっても経営者が巨額な報酬を得ていたGM社の例などあるが)。まずは上述したような項目での報酬の内訳を見てからでないと議論は難しい。事業環境なども分析し収益計画に対し実際の業績がどうであったかとか、長期的な戦略の布石を打っているか、などの定性的な分析も評価に加えるべきである。このためには第三者的な目での報酬委員会の査定も有効であり、監査役設置会社でもこのような委員会を置くことも意義あるかと思う。このような仕組みとする方が「高額」な報酬を得ていると評される経営者も心安らかではないか。

野村証券の役員について企業収益が低いにもかかわらず報酬が高額との批判がある。国際的な業務展開の面では海外の投資銀行との熾烈な競争があり責任も重い。放っておけば優秀な人材が「外資」に引き抜かれるリスクについても勘案すべきではないか。

制度のバランスの点で個人的に疑問に思うのは顧問の報酬についてである。大企業やメガ・バンクなどかなりの顧問を抱えていると思うが、報酬の決定と開示のあるべき制度を論議し、この辺りにメスを入れるのも企業ガバナンスの課題と思う。

(文責:門多 丈)

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