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民主党は政策をもっと深めるべし 門多 丈

2010年06月28日
相変わらず民主党の政策には上滑りのものが多い。政策の実効を上げるためには政策の中身をじっくり、想像力豊かに深めていくべきだ。例えば最近発表された法人税減税構想や新成長戦略中での「インフラ輸出とトップ外交」についてである。
相変わらず民主党の政策には上滑りのものが多い。政策の実効を上げるためには政策の中身をじっくり、想像力豊かに深めていくべきだ。例えば最近発表された法人税減税構想、や新成長戦略中での「インフラ輸出とトップ外交」についてである。

法人税減税構想についてはその政策的位置付けをもう一歩深めるべきである。構想の背景には成長戦略に関し日本より法人税率が15%ほど低い韓国のサムソンなどとの体力の差(利益を将来の研究開発に回せる金額の多さ)の意識や低税率のシンガポールなどに日本企業が軸足を移すことの懸念があるという。法人税を下げるに当たっては政策効果の最大化の点からは、労働分配率のあり方についても検討すべきであろう。具体的には労働分配率を上げることで、法人税減税のメリットの一部を国民に還元する方策である。消費税増税の動きの中で一層の消費の冷え込みが懸念されている中で、国民に活力と希望を与える政策になりうる。法人税減税は企業にとってはそれを成長戦略にどのように生かすかが経営課題となるが、コーポレートガバナンスの点では労働分配や株主への配当の政策に関する課題も出てくることでステークホールダー論にも及ぶ注目すべき事態と考える。

財務省は法人税減税による税収減の懸念を持っている。地方などでは企業の8割近くが赤字と言う。この現状を直視すれば、税率で議論するのではなくこのような経済環境をいかに改善するかのマクロ的な視点が財政の点でも必要となろう。自民党の谷垣総裁が今回の菅首相の「消費税の10%への増税構想」の発表に対し「自民党の政策をカンニングした」と発言した。国のために良かれと自ら立案した政策であれば、誰が取り上げようがその実現に自らも動き、将来の財政など幅広い関連する課題についても同じテーブルについて議論するのがあるべき政治家としての対応ではないか。

経済産業省がまとめた「産業構造ビジョン」では今後の日本経済を担う5つの戦略分野の1つとして「インフラ関連・システム輸出」が挙げられ、その中でトップ外交の重要性が指摘されている。米国、中国、フランスなどトップ外交が顕著な国は明らかにあるが、今回の戦略の中で日本のトップ外交がどのようなものであるべきかの考えを論理的に深めるべきではないか。

今さらトップ外交はインフラ機器やサービスの単なる口先だけの売り込みであるべきではない。かって某首相が数百人の財界人を伴って中東諸国を訪問したが、これも今日期待されるようなトップ外交のあり方ではない。先方の国の成長戦略や経済・財政の実情を十分理解したうえでのトップとしてのアプローチであるべきである。要はトップも相手の国のニーズを正確に分析し把握し理解したうえで当たるべきである。それが説得力と信頼の源泉であり、またそうでないと厳しい国際競争の中では日本は勝ち残れない。

インフラ事業は長期にわたる事業のコミットであり安定的で効果的な操業を現地で行うことが決め手となる。例えば水ビジネスなどでは収入の半分近くが現地での運営管理によるサービス収入となる。国としてはそれが確実に確保されるための条件や環境が整備されるように、相手国と周到な交渉を行うべきである。この面でのトップの認識が相手国に対する牽制となり説得力となると考える。

(文責:門多 丈)

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