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社外取締役の最大の責務はCEOの見極め 門多 丈

2010年06月10日
研究会の勉強会で高橋秀明慶応大学大学院教授からは取締役会の役割に関し「社外取締役の最大の責務はCEOの見極めであり、不適切なCEOを排除するには社外取締役の数も重要」など示唆に富むコメントがあった。
実践ガバナンス研究会の第6回勉強会では「企業競争力回復と社外役員の役割」のテーマで高橋秀明慶応大学大学院教授に講演頂いた。高橋教授は米国企業(NCR,AT&T)、日米合弁企業(富士ゼロックス)の経営幹部を経て、現在NEC日本電気など日米の大企業3社の社外取締役に就任されている。教授の多様なご経験とグローバルな観点からのお話は、私にとっても「目から鱗」と言うべき刺激を頂いた。

高橋教授からのキー・メッセージは「社外取締役の最大の責務はCEOを見極めることで、その解任などの実行をするには取締役会での社外取締役の力と数が重要」とのこと。高橋教授は現在電子機器ビジネスをグローバルに展開する米国中堅企業の社外取締役に就かれているが、そこでの最大のチャレンジはCEOを解雇することであった。最高益を計上した直後の解雇であったが、当社が次の成長のステージに入るためには別の資質のCEOが必要と取締役会が判断したとのこと。解雇されたCEOの名誉と報酬には十分な配慮もしたとの説明もあった。

このケースは取締役会が日頃から企業の成長や差別化の戦略を議論し、執行はCEOに任せるが、CEOの評価の基準は定性、定量の両面で取締役会が予め明確に決めておくべきであるということの好例である。高橋教授からは取締役会がこのような力をもつには社外取締役の質と数が重要とのコメントもあった。この話を聞いてこの考えは事業承継の課題にも応用できると考えた。創造力と実行力が豊かな創業経営者でも、会社がある段階に来た時点では次の成長のためには退任すべき状況がありうる。またこれについて誠意を持って「社外の目から」説得するのも社外役員の任務と言えよう。私もいくつかの会社の社外監査役に就いているが、取締役会の出席にあたり常にこのような目でCEOを監察しているか高橋教授のお話は自らを反省する良い機会となった。

席上で高橋教授に「株主にもいろいろなタイプがあるが、日頃社外役員として意識する株主は誰か」との質問が出た。答えは「長期の観点で企業価値の向上を期待する株主」とのことで大変クリア・カットなコメントであった。

(文責:門多 丈)

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