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社外役員とガバナンスの実効性 門多 丈

2010年03月29日
社外役員を置くことは企業の経営に「緊張感」をもたらし、ガバナンスの面では取締役会での議論の深化と経営と業務執行の分離の面で効果がある。
このブログで前回安田正敏氏が社外役員を置くことについて「社外の目で見られることでの(企業や経営に)緊張感を生み出す」と書かれている。この視点をガバナンスの実効性の面から深めると2つのメリットが浮き出てくる。取締役会での議論の深化と経営と業務執行の一層の分離である。

取締役会は経営陣の業務執行についての監視の責任を持つ。具体的には事業の遂行にあたり「よく調べ」「十分論議をし」「適確な判断をした」かについて検証する責務を負うが、このためには社外役員が一種の触媒として、また社外の観点やさまざまな専門性をインプットすることで、取締役会を真の議論の場とするように貢献できると思う。また企業として過大なリスクを取っていないか、意思決定後の事業遂行にあたっては潜在するリスクを経営陣がしっかり認識しているかを常にチェックすることもステークホルダーのための重要な責務となる。

このような取締役会の議論を議事録として正確に記録することは、株主などのステークホールダーに対する必須の義務となる(ガバナンス上重要な説明義務の履行である)。この記録は活発な議論を踏まえたうえで論理的で立体的なものであることが重要であるが、それに加えて多様な外部のステークホルダーに分かりやすいもの、いわば社会一般常識で理解できるもので社内用語や専門用語による難解な議事録と異なるべきである。この面での社外役員への期待も大きい。

社外役員を取締役会に配置することで経営と業務執行の分離の実効性が増す。従来社外役員を持たない会社では重要事項は概ね経営会議で議論し決定していた。社外役員が取締役会にいる場合は経営の重要事項は取締役会に諮り議論し決議することとなる(これに関しては取締役会付議基準の明確な規定が設けられる)。このような構造的な配置は従来我が国の企業にありがちであった、企業の戦略や事業や経営資源の配分についての内輪で議論と決定を不可能にする。

実践コーポレートガバナンス研究会は5月の17日に「役員の独立性について」のセミナーを準備しているが、その中では今年から東証が導入する「独立役員制」をテーマにし期待される機能や独立役員としての要件や資質を議論することとなっている。東証への独立役員の届け出とともにコーポレートガバナンスについての考えを「ガバナンス報告書」で記述する事となる。このように企業が明示的にガバナンスについての選択と説明を迫られることは画期的な事であり、この面でも「緊張感」が高まっていると実感する。

(文責:門多 丈)

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