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何かか変だぞ;ウィルコムの会社更生法申請 門多 丈

2010年03月01日
PHS携帯電話のウィルコム社が会社更生法の適用を申請した。カーライル・ファンドの投資の失敗、巨額の銀行借入れ債務の切り捨て、ソフトバンクが入る経営再建、企業再生支援機構の支援策、などいろいろ疑問がある。特に貸付け債権の巨額な切り捨てを前提とした更生計画を銀行の株主は看過すべきでない。
カーライル・ファンドの責任は重い。世界的にITや通信分野の投資を強みとするカーライルにとって今回の失敗は深刻だ。投資(株式)の全損となった訳であるが、事業と投資戦略の問題とともにリスク管理の面でも追及されるべきだ。

今回の破綻に至るまでには投資ファンド・マネージャーとしてカーライルにはポイント・オブ・ノーリターン(損失をそこで止めるとかこれ以上借入を増やさない)があったはずであり、そこでどのような意思決定をしたかの責任が問われるべきである。インダストリアル・パートナーとしての京セラ社との協働も効果がなく、かえって足を引っ張ったということではないか。

更生計画における銀行貸付け債権の巨額な切り捨ては、安易に認めるべきではない。ウィルコム社は昨年3月末に50億円以上の純益を上げているという。設備などの減価償却額を考えるとキャッシュ・フロー(EBITDA)も足元ではかなり潤沢であったはずである。銀行団が貸付けのリファイナンスに応じなかったことが今回の破綻の原因ではあるが、そもそもウィルコム社がこれまで巨額のファイナンスを行ってきたのは、次世代PHSの事業のためでもあったはずである。

今回の再建計画では次世代PHS事業が中核(M&Aの用語ではクラウン・ジュエリー)となるがソフトバンクなどの次の事業推進者は相応の債務継承を行うべきではないか。この点については管財人や裁判所の厳正な審査を期待する。特に前回次期PHSの入札で負けたソフトバンクにとっては今回の事業継承は「濡れ手に粟」と言うべき事態ではないか。

企業再生支援機構の支援は100億円の融資で検討されていると聞く。金額も小さく経営へのガバナンスのさほど効かない融資の形で行うことで、果たして機構の支援策と言えるのであろうか。機構の第三者委員会である「再生支援委員会」で論議を尽くすべきである。

(文責:門多 丈)

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