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巨大災害とガバナンス 門多 丈

2014年03月11日
東北大震災での対策の初動の遅れは、行政ガバナンスの問題であった。リーダーシップとは「限られた情報の中でトップが決断し、迅速に組織を動かすこと」にある。
先月の実践コーポレートガバナンス研究会勉強会では、元警察庁長官の安藤隆春様に「治安と日本社会の変化」」のタイトルで講演を頂いた。

安藤様は3.11東北大震災の際には警察のトップとして指揮に当たられたが、「阪神大震災とは規模も性格も違う巨大災害」との認識で多様な警察措置をとられたとのこと。具体的には災害が地震、津波、原発と複合していたこと、被災地域の広がり、資財の流失、行方不明者数の膨大さ、などを考慮し(通常は都道府県単位である警察の)指揮権を警察庁長官に集中された。講演で安藤様は国、都道府県、市町村と重層構造になっている行政のために、国としての執行の初動の仕組みがなかったことを指摘された。我々も実感した行政の災害対応の遅れの問題が発生したのである。安藤様は現場でしっかり議論し記録を残し警察として「初動が良かったのか」について検証すべきことを早いうちに指示を出されたとのこと。今後のリスク管理の核心とも思った。

全国の現場の警察官に対し安藤様は「いくら持ち場が忙しくても、まずは東北震災地に行け」と指示され、放射能被害が大いに懸念された原発の近くにも自ら出向かれた。「リーダーシップとは『限られた情報の中でトップが決断し、迅速に組織を動かすこと』」と自戒されたとのこと。お話を聞きながら、このリーダーシップの考えは企業経営にもそのまま通じるものと痛感した。全国の多くの警察官を災害の現場に向かわせたのは救済の手が足りなかったのはもちろんであるが、警察官が自らの任務の自覚を高めること、いざという時の警察の役割を社会に評価してもらいたい、とのお考えであった。これも「組織経営」の優れた発想であったと思う。

時代や社会の変化の中での日本の治安の課題については、オレオレ詐欺、無差別殺人、外国人犯罪などについて興味深いご指摘がいろいろあった。グローバル化、情報化の中で課題は複雑になっており、頻発するサイバー攻撃、知財紛争や最近のビットコイン「消失」事件などを見ても明らかであろう。

(文責:門多 丈)

この記事に対するコメント一覧

Posted by 大海渡 憲夫 - 2014年3月17日 15時00分
「大災害」及び「国土安全保障」という今や国民的関心も高い二つの事態に対しどう対処すべきか、行政が後手に回っていることを憂慮します。嘗て日本の組織や組織的行動は、効率性と協調性を希求する欧米(大学院レベル)の研究対象(モデル)にすらなっていましたが、これも退化してしまったということでしょうか。3.11で記憶に残る救済活動を展開した同盟国米国の卑近な例からも学ぶことがあると思われます。即ち、Federal Emergency Management Agency(FEMA: 連邦緊急事態管理庁)とDepartment of Homeland Security(国土安全保障省)です。既存の関連省庁を束ねて超法規的に情報収集・分析そして意思決定・伝達を行うメカニズムは参考になります。

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