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「責任ある投資」を考える:米国での年金会議に出席して 門多 丈

2015年03月11日
年金基金などの機関投資家は投資先企業のES&G(環境、社会、ガバナンス)について納得出来なければ、企業には投資しない時代になってきている。日本のスチュワードシップ・コードに於いても、ES&Gは「長期的な観点の立った建設的な対話」の中心テーマになるものと思う。
先日、ロスアンジェルス近郊でのPacific Pension Institute(PPI) の年金ラウンドテーブルに出席した。PPIはカルパースなどの米国、欧州、アジアの公的年金などの機関投資家がメンバーとし、それぞれのミッションに応じた運用のあり方を考えるリサーチ、研修、啓蒙の団体である。今回の会議のテーマはES&G(環境、社会、ガバナンス)と「責任ある投資」であった。2日にわたり熱心に議論をしたが、年金基金などの機関投資家はES&G(環境、社会、ガバナンス)について納得出来なければ、その企業の株式・債券には投資しない時代になってきていると思った。


会議の冒頭ではESG投資については欧米でもいろいろな意見がありうるとのコメントがあった。具体的にはこの投資が「投資のリターンを上げるためのものか、社会的義務と考えるべきものか」とか「ポートフォリオの一つのセクション(分野)として取り上げるべきか、ポートフォリオ全体に関係するテーゼとして考えるべきか」などである。


基調講演は、国連の「責任ある投資」(PRI; Principles for Responsible Investment)のManaging Directorの Ms.Fiona Reynoldsが行い、責任ある投資はFiduciary duty (投資家の受託責任)との関連で重要なコンセプトとのコメントがあった。ESGについては投資先企業をよく理解するための切り口であるとし、「投資先企業のESGにおける社会的責任の充足度合いを勘案しながら長期的視点で投資リターンを実現する」のが責任投資との説明があった。このようなアプローチをとることで投資の長期的なリスクを低下させることも強調された。ES&G はプライベート・エクィティ投資やエマージング投資で極めて重要かつ効果的との興味深い議論もされた。この流れの中からはESGは今やポートフォリオのセクションではなく、ポートフォリオ運用全体に関するものとの考えが議論の主流と思えた。


カルパースはESGに積極的に取り組んでいて、投資先のエネルギー企業が伝統的なエネルギーからクリーン・エネルギーに事業転換する(clean capital transformation)ことを支援している、などの具体例の報告がファンドマネージャーからあった。


日本でも今後本格化するスチュワードシップ・コードに於いて、ESGは「長期的な観点の立った建設的な対話」(エンゲージメント)の中心テーマになるものと思う。今回の会議のエンゲージメント投資セッションでは、日本のスチュワードシップ・コード導入も話題になった。私からはアセット・オーナーと企業との「対話」では、ガバナンス(特に取締役会の企業成長へのコミットとリーダーシップ、合理的な役員報酬制度)と企業戦略(国内での利益マージン拡大と事業再編と海外でのM&Aも含めた収益向上のための成長戦略)が中心テーマになるべきと発言した。


(文責:門多 丈)

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