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許せない株主財産の毀損-東芝、タカタ 門多 丈

2017年07月10日

東芝、タカタは経営破綻で株券がほぼ紙くずになる。経営の失敗のツケを投資家が負わされるのである。出光の公募増資は株主権の点から、30%の巨額な増資でありながら直前の株主総会で言及されていないことなどで重大な疑義がある。


東芝、タカタは経営破綻で株券がほぼ紙くずになる。日本の株式市場にとっても尋常ではない事態であり、両社を優良会社と考え投資していた株主にとっては大打撃である。度重なる判断ミスとリコールなどの緊急事態への不適切な対応での経営の失敗のつけを投資家が負わされるのである。企業価値と株価の向上で経済の活性化を標榜する安倍政権もこのような事態をどう考えるのか。資本市場の発展と健全化と個人金融資産の形成に責任を持つ金融庁、東証にとっても深刻な問題と思う。 

東芝は半導体メモリー事業を売却し、2兆円以上の資金を得ようとしていると報道されている。東芝の債務超過の解消とキャッシュフローの確保のために経営が、切羽詰って売却をしようとしているように思える。売却対象の資産は株主のものである。売却される事業の従業員の気持ちも複雑であろう。そもそも株主にとってこの売却が得策かは不明であり、現に先日の株主総会では反対意見も出た。メモリー事業の継続か売却のどちらが長期的に東芝の株主に取ってよいかを厳密に検証すべきであり、取締役会でこの議論を尽くしているのであろうか。東芝については会計不正の重大事件が発生した当初の時点で関係する経営陣に対して刑事的な厳罰で処していれば、ここまでの「暴走」はなかったのではないか。 

タカダが巨額の負債を抱え法的整理に入るが、コーポレートガバナンス上の問題は、同社の株式の60%を高田ファミリーが所有していることである。欠陥エアバッグの問題が発生した後の企業経営の対応について、取締役会の監督機能が働かず経営陣の交替も出来なかったのである(今回の株主総会でも経営陣取締役の退任は無かった)。メインバンクなど銀行もこのような株主のコントロールが効かない状況に於いては、主体的にガバナンスの責任を果たすべきであった。上場会社の株式をオーナーが過半を所有することは、株主権の行使に関して構造的な問題があった。東証は上場基準などに関しこの問題を今後のために検討すべきと思う。 

株主権の面からは今回の出光の増資も疑問だ。増資により創業家の持ち株比率は33.92%から26%台に低下すると言われる。創業家の持ち株比率を3分の1未満にすることで、合併などの重要な取引についての特別決議に創業家が反対しても議案を通せる。経営陣にはそのようなエゴがあるのではないか。増資の目的である資金の実需はあると説明しているが、やはり「李下に冠を正さず」である。このような増資を引き受ける証券会社も軽々に応じるべきではないと思う。今回の増資について東証は市場価格で行われる公募であることからことで個別に審査をしないとのことであるが、このように株主権に関わる重大な増資については何らかのチェックをすべきではないか。今回の増資は取締役会の決議で行うが、「公募増資は、定款に定められた授権株数の範囲であれば取締役会の決議で行える」ことを根拠としている。やはり今回のような株主権に関わる重大な増資を、株主総会での審議なしで取締役会の決議だけで行うのかも個人的には疑問に思う。直前に株主総会があったが今回の増資について説明はなかったと聞く、発行済み株式の3割に当たる巨額な増資であり経営の課題の中などで当然言及すべきであったのではないか。

(文責:門多 丈)


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