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進展する英国のコーポレートガバナンス改革 安田 正敏

2017年09月15日
英国政府が最近発表したコーポレートガバナンス改革の骨子は、経営者の報酬開示などについて経営者と一般従業員の報酬の乖離率を開示することなど、世界でも初めての試みが盛られています。経営者の報酬を巡る議論にしても、従業員の利益の反映の施策にしても日本での議論はここまでのレベルには遠いものがあります。また、米国の企業文化からも少し離れているような気もします。今後の展開をウォッチしていく必要があります。
英国政府が8月29日には発表したコーポレートガバナンス改革の骨子は、日本のコーポレートガバナンス改革のさらに先を行くものになっています。新聞発表の資料によるとその骨子は次のようなものです。その主たる目的は、取締役の説明責任をさらに強めること及び企業に対する一般の信頼性をより高めることです。

すべての上場会社(約900社)の経営者の報酬と英国の一般従業員の平均の報酬の乖離率を開示すること
経営者の報酬パッケージに対して株主からの強い反対があった全ての上場会社は一般に開示される新しい登録制度でその名前を開示しなければならない
従業員の声が取締役会に反映されることを保証する一連の施策

上場会社の経営者と一般従業員の報酬の乖離率を開示することは、世界で初めての試みであると報じられています。さらに、経営者の年報に対して株主の5分の1の反対があった上場会社の名前が公開登録されることも世界で初めてのことです。ビジネス・エネルギー・産業戦略省のグレッグ・クラーク大臣は、「このコーポレートガバナンス改革の一連の施策は株主、従業員及び一般の人々に対して大企業の透明性を高めるものである」と述べています。
上記以外にも次のようなことが求められます。

一定規模の会社は、取締役が従業員と株主の利益をどのように配慮しているかを公に説明しなければならないこと
すべての大会社は責任ある事業展開について公にしなければならないこと

英国政府は、これらの施策を今後数か月の間に新しい法律として導入し、2018年6月に施行することを目指しています。

また、同大臣は、財務報告審議会(FRC: The Financial Reporting Council)にたいして、この新しい要求を英国のコーポレートガバナンス・コードに反映させることにより、高い基準のガバナンスを設定することを要請しています。

これによって、「遵守か説明か」のルールにもとづいて、コーポレートガバナンス・コードでは、会社は次のことを要請されると予想されています。

従業員を代表する非業務執行取締役の設置
従業員による諮問委員会の創設
あるいは、従業員から執行取締役を選出すること

経営者の報酬を巡る議論にしても、従業員の利益の反映の施策にしても日本での議論はここまでのレベルには遠いものがあります。また、米国の企業文化からも少し離れているような気もします。今後の展開をウォッチしていく必要があります。

(文責:安田正敏)
詳細は添付のプレス・リリースを参照してください。

この記事に対するコメント一覧

Posted by 門多 丈(実践コーポレートガバナンス研究会) - 2017年9月20日 14時11分
非常に注目すべき動きと思います。BREXITの背景ともなった格差問題についてのメイ首相の配慮を反映しているものかと思います。形としては政府からFRCへの勧告(英国CG Code見直しについての)ということになると思います。英国のガバナンスがドイツ風になるか、FRCもここまで頭の整理がついているかなどの疑問がありますが、(日本のCG Code見直しにどこまで反映するかも?)

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