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人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢:吉岡桂子著/小学館 書籍レビュー

2017年09月28日
朝日新聞で北京駐在が長かった著者が人民元の紙幣の歴史とともに国際通貨として確立しようとする中国政府の努力について解説している。その中で国内の政治・経済・金融の不安定性の中で資本流出のリスクがあることで、通貨としての潜在的な不安定性に晒されていることも分析している。
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朝日新聞で北京駐在が長かった吉岡桂子さん著「人民元の興亡」(小学館)では中国の通貨についての考え、例えば中国として自国通貨について「切り下げはすべきでない」との哲学も感じた。人民元の通貨としての確立が朱鎔基の国内経済・金融改革としてセットになっていたこともよく理解できた

97年のアジア通貨危機の際に日本が主導してAMF(Asia Monetary Fund)設立の構想があったが、米国と中国の反対で実現しなかった歴史も興味深い。2001年のWTOから2015年にIMFのSDR構成通貨になるまでの中国の戦略は極めて周到とも思うが、人民元は未だ構成通貨の要件は満たしていないのも実状である。

米国と中国の間でかつての日本とのような通貨、貿易摩擦が起こりうると思うが、日米の間では「同じテーブルに座り交渉する(極めて苛烈であったでしょうが)」ことが前提でやはり同盟関係があるためからと思うが、中国の経済が巨大になった段階ではそもそもこのような交渉が成り立つのかとも読みながら考えた。

(文責:門多 丈)

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