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コーポレートガバナンス改革の次の一歩は 門多 丈

2017年11月08日
コーポレートガバナンス改革の次の一歩は、取締役会の活性化と株主総会の運営の改善である。最近頻発する企業不祥事の背景には「内向き」の経営姿勢と企業風土がある。株主と社外取締役による経営の適切な監督が一層重要になっている。
先日、米系投資銀行主催の日本株投資ファンドのCIO(Chief Investment Officer )向けのセミナーで、日本のガバナンス改革の現状と課題のテーマで講演した。主催者によると 海外の投資家は「(日本株に)投資しない理由をいろいろ考えている」とのことで、ガバナンス改革が「息切れしていない」ことを説明するような機会となった。

 講演では、まずコーポレートガバナンス・コードの導入による前向きな変化について

  • 東証一部上場企業(約2000社)では社外取締役を二名以上置く企業の比率が 88.0% となり、コーポレートガバナンス・コードの導入前の2014年の21.5%に比して大幅に増加した
  • 上場企業のROEの平均は8%を上回り、ROAも米国並みの3%となった
  • 上場企業の株主総還元率は平均で約40%(うち配当で30%,自社株買いで10%)
などについて説明した。

 席上、海外のファンド・マネージャーから「日本企業経営者に何をアドバイスするか」の質問があり、私は「もっと経営や投資のリスクをとり、リーダーシップを発揮すべき」とコメントした。また日本企業が過剰なキャッシュを留保しているのではとの質問に対しては、明らかに日本企業の資産効率は悪く、銀行借り入れなどでレバレッジを効かせる工夫もすべき」とコメントした。

 東芝、タカタ、日本郵政の不祥事に触れながらコーポレートガバナンスの一層の改革の課題についても話した。東芝では過剰なリスクテイク、タカタではリコール問題への不適切な対応、日本郵政では戦略にマッチしない巨額のM&Aとそれぞれ問題の性格が違うが、各社の社外取締役はもっと突っ込んだ議論をし、経営陣の意思決定プロセスを監督すべきであったとコメントした。特に終身雇用の「内向きな」経営姿勢と企業風土の改革が必要と強調した。

 指名委員会については、任意の諮問委員会でもCEOや取締役の選出についてじっくり時間をかけて審議すべきこと、例えばCEOの選出については「候補の一人には必ず社外の候補を入れる」などの工夫があってもよいと私見を述べた。株主総会が活発化する機運を紹介し、スチュワードシップ・コードの関連で株主総会議案に対する「議決権行使の開示」が求められたことで、投資顧問会社や信託銀行などの機関投資家の株主総会への取り組みが強化されている状況も説明した。今や国内外の機関投資家が日本の上場企業の株主構成の4割を占める(国内外機関投資家がそれぞれ2割)状況に触れ、機関投資家が株主総会の議論に一層積極的に関与すべきともコメントした。

 当日のプレゼン資料(英文)“ Characteristics and Emphases of Japanese Corporate Governance Code ”と “Ongoing Sophistication of Japanese Corporate Governance Reform”については、私の実践コーポレートガバナンス研究会での英文ブログの添付資料をご覧頂きたい。

>>英文ブログ:こちらをクリックしてください

(文責:門多 丈)

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