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みずほ銀行産業調査部レポート「ステークホルダーとの調和の取れた企業経営のあり方」を読んで 門多 丈

2013年07月29日
みずほ銀行産業調査部レポート「ステークホルダーとの調和の取れた企業経営のあり方」には、社外独立役員を含めた取締役会の在り方やコーポレートガバナンスの意義や課題についての議論が欠落している。
みずほ銀行産業調査部発刊の「Mizuho Industry Focus Vol.133」では「持続的成長に向けた資本主義の再構築について ~ステークホルダーとの調和の取れた企業経営のあり方~」を考察している。


ソニーに対しての投資ファンドサード・ポイントの提案など「物言う株主」が活発化する一方、安倍政権の下で発足した経済財政諮問会議では「目指すべき市場経済システムに関する専門調査会」での経済の持続的成長に向けた資本主義のあり方についての議論が開始されている状況を踏まえ、将来に向けて企業と株主の調和の新しいあり方を見出すべきとの考えから論述されている。

このレポート(7ページ)では、持続的成長の実現に向けてはすべてのステークホルダーとの調和を重視する必要があるとの観点から、「企業価値」を再定義し「全てのステークホルダーの価値の総和」とすべし(レポートの7ページ)との発想は面白い。ただ従来の企業価値議論からの飛躍が大きすぎて、実際の経営実務ではどのような指標になりうるかの論議は深めていく必要があろう。

このレポートの最大の問題は、企業経営と株主の関係のみを取り上げ、独立役員を含めた取締役会の在り方やコーポレートガバナンスの意義について何も語っていないことである。「企業が自らの存在意義を追求する(それをステークホルダーに向けて表明し、評価を仰いでいく)」では、その主語が誰なのかはわからない。このレポートを書く主な趣旨として「株主偏重の考え方を是正」(3ページ)とあるが、日本の経営が今まで株主を軽視しているのが実状ではないか。年金などの機関投資家を含め株主を含め「短期回転型投資」と断じる(4ページ)のも不思議である。「短期的に株主に対する配分を増加させるためには、株主以外のステークホルダーの配分を減らすしかなく」と分析している(5ページ)が、これは実証されている事実であろうか。

企業経営の近視眼化に伴う縮小均衡、顧客志向の欠如などの問題指摘(6ページ)は正しく、ステークホルダーの顧客順位の明確化(10ページ)や「株主に対しては全体整合的で練り上げられた戦略を語るべき」(11ページ)との提言は興味深い。このような課題を効果的にフェアに実行するためにも、社外独立役員が主体的、機能的に参加し貢献する取締役会の体制を強化しコーポレートガバナンスを充実することが必要となるのではないか。

(文責:門多 丈)

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