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スルガ銀行の不良債権問題と貸し手責任 門多 丈

2018年08月13日
シェアハウス・ローンでのスルガ銀行の巨額な不良債権問題には、経営が関与していた場合でも、経営が見過ごしていた場合でも、いずれであっても内部統制の重大な欠陥があった。オーナー系の企業であり、自由闊達な議論ができる企業風土が醸成されているかを社外取締役が監督することも重要であった。
シェアハウス・ローンでのスルガ銀行の巨額な不良債権問題には、まるでバブルの既視感を覚える。

スルガ銀行が事故調査のための第三者委員会を立ち上げ「同行の行員らが審査書類の改ざんなどの不正に関わったかどうかを調べる」とのことだが、銀行の取締役会の監督責任や内部統制についての解明をすべきと思う。コーポレートガバナンスの観点からは、このような異常な取引について取締役会や経営委員会がどのような議論をし、問題が大きくならないようにどのような手を打ったのかの調査が重要である。

シェアハウス・ローン問題については、スルガ銀行の貸し手責任は甚大である。シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの30年間にもわたる家賃保証を頼りに、個人が一人当たり1.5億円程度の借り入れを行ったのである。スルガ銀行の融資窓口はこのような貸し付けに何もためらいがなかったのか。まさに金融庁の言う顧客本位の業務運営の重大な違反である。スマートデイズは年率8%の利回りの家賃保証をしていたとのことだが、これを頼りに個人が借り入れをすることのリスクは銀行員であれば直ちに分かるはずである。案の定スマートデイズは破産し、シェアハウスのオーナーは巨額な借り入れ債務を長期に負い自己破産の危機に瀕している。このような無謀な借り入れをさせないのが銀行員の責務である。

銀行の融資審査部門による歯止めも効かなかったようだ。スルガ銀行の危機管理委員会の調査には「事実上、営業が審査部より優位に立ち、営業部門の幹部が融資の実行に難色を示す審査部担当者を恫喝した」との記載がある。シェアハウス・ローンの実質リスクは家賃支払いを保証するスマートデイズにあった。この認識でスルガ銀行が厳密な与信管理をしていたのであろうか。シェアハウス・ローンの貸し付けはいくつかの支店に集中していた。ここ数年でこのローンの残高が2000億円を超える状況(同行の貸出残高貸出残高3兆円に対しても小さくない金額)になっていた。リスクベースの監査が出来ていなかったということではないか。内部監査をしっかり行えば、良きにつけ悪しきにつけ融資残高の急増や高い貸付金利率などに着目し将来の経営へのインパクトについての議論が起こったはずである。。監査役にも同様の責任があったのではないか。内部通報は監査役に届いていなかったのだろうか。スルガ銀行の会計監査人はシェアハウス・ローンの資産評価について然るべき監査を行っていたのであろうか。

今回の事件ではスルガ銀行の内部統制が機能していなかったことは明らかである。行員を対象にした社内調査では「相当数の社員が不正を認識していた可能性がある」とのことである。経営の利益至上主義の姿勢が最大の問題であったと思う。経営トップの考え(tone at the top)が倫理性や誠実性のない風土をつくったのではないか。今回のような問題は現場を知る経営会議で、「銀行の業務として妥当か」「そこまでやるのか」など活発な議論がされるべきであり、経営にインパクトが大きい懸案についてはタイミングよく取締役会に諮るべきであった。スルガ銀行はオーナー系の企業であり、自由闊達な議論ができる企業風土が醸成されているかを社外取締役が監督することが一層重要であったと言える。総額2036億円になるシェアハウス・ローンに対し382億円の引当金が妥当かを取締役会はしっかり検証したのであろうか。

スルガ銀行の危機管理委員会の調査レポートでは2017年2月まで、同行の取締役会、経営会議でスマートディズ関連融資は議論されなかったとある。その後も今年年初のスマートディズ社の破綻までの間はシェアハウス・ローンの貸し付けを継続していたとすると、同行の貸し手責任はさらに重い。

(文責:門多 丈)

※ 本記事はニッキンレポート2018年6月5日号「ヒトの輪」コラムに投稿したものです。

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