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三菱重工のMRJ「償却」に疑義あり 門多 丈

2018年09月11日
三菱重工はIFRSへの移行のタイミングで、MRJ研究開発の費用4,000億円を損益計算書を通さずに償却した。投資家、株主二十分な説明がされたかが疑問である。

三菱重工は今期193月期(第1四半期報告書)より、連結財務諸表作成について日本基準からIFRS(国際会計基準)に移行した。この移行時点(4月1日)に同社グループの自己資産が4000億円「圧縮」された。MRJの研究開発費のうち、固定資産となっていたものについて、長期の回収性の点からその評価を見直したという。IFRSへの移行時の処理のため、この4000億円の「償却」は直接資本勘定の減額となり、損益計算書を通さずに処理されたのである。 

同社が日本基準のままであったり、IFRSに移行後の2年目であれば、この償却は損益計算書上で減損処理されるはずであった。今回の4000億円の「償却」金額は、前期183月期の三菱重工の営業利益が1265億円であったことを考えれば甚大である。三菱重工はこのような重大な処理を、1858日に公表した2018事業計画での全体数値計画(IFRS適用後)の注記でしか開示していない。 

コーポレートガバナンスの優等生、企業情報開示の先駆者と言われる三菱重工らしくない行動ではないか。「償却」を損益計算書に反映した場合に想定される巨額の赤字決算への批判を避けるための、経営陣による苦肉の策、会計基準のショッピングと批判されても仕方がない。MRJ事業については、これから研究開発費がいくらかかるのか、これまでかかった費用について、どれくらいどのように回収できるのか、その事業性について投資家から厳しく問われているのである。三菱重工の経営陣は、その点を自覚すべきである。

(文責:門多 丈)

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2018年8月6日号「複眼」欄に投稿したものです。

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