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AIは未だ脳ではない 門多 丈

2018年10月23日

AIブームの中で「AIは人間の仕事を奪うのでは」との危惧があります。現状ではAIはコンピューターの出現と同じく効率化に役立ち、労働力の「代替物」であるとの観点から活用を考えます。


先日ある集まりでAIによって公認会計士、弁護士などのプロフェッショナルな仕事も奪われるとの話題となった。このようなAIは意思決定の精度を上げ、事務の効率化に利する類のものであり脅威ではない。従来の技術革新と同様にいかに活用するかが課題となる。 

将棋や碁でAIが優位となってきているのは、膨大な可能性について大量なデータを超スピードで処理し解を導きだす手法によるためである。確率の精度を上げリスクを減らすアプローチである。企業経営や投資の判断の向上には利するものである。これは脳の機能とは全く違うものである。哲学者のハンナ・アレントが60年前にコンピューターが出現について「人間の労働力の単なる代替物」「すべての操作をもっとも単純な構成要素の動きに分解する」「この機械のすぐれた力は、そのスピードに表れており、それは人間の頭脳力よりもはるかに速い」と書いた(「人間の条件」。ちくま学芸文庫)。これが本質を衝いている。 

現時点では脳の機能は我々の科学では完全には解明されていない。人間がどこで考え(物質的な脳ではない空間で考えているようだ)どのように意識が形成され、好き嫌いの感情が出てくるのかもよくわかっていない。ディープ・ラーニングが発達するとAIにもそれが可能となると考えられているが、その実現にはかなりの時間がかかるであろう。その際には、AIに倫理・規律をどう持たせるかについて考えておく必要がある。

(文責:門多 丈)

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2018年9月5日号「複眼」欄に投稿したものです。


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