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脅威はフィンテックよりもBig Tech 

2018年11月16日
GAFAなどの日本での存在感も大きくなっていますが、プラットフォーマーとしての展開は既存のビジネスに対して大きな脅威となります。銀行や証券業務などの金融サービス分野での劇的な競争環境の変化を分析してみました。

我が国ではフィンテックについては、やネットの革新的な技術を使い新しい金融サービスの提供や業務の効率化を狙う面から専ら議論されている。銀行や証券にとっては、アマゾンなどのプラットフォーム企業(プラットフォーマー)が彼らの強みを生かした金融事業を展開することに、どのように対応していくかが重要な戦略的課題と思う。

米国の(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)やウーバーは、Big Techと呼ばれ、やネットの技術とビッグ・データを活用しプラットフォーム・ビジネスを展開している。フェイスブックは(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、アマゾンは書籍のネット販売、ネットフリックスは動画コンテンツ配信、グーグルは情報検索、ウーバーはタクシー配車、とBig Techの「生い立ち」は様々であるが今後は各社がプラットフォーマーとして販売、物流、情報サービス、金融の総合的にビジネスを展開していく。

これらのプラットフォーマーの脅威は、個人や法人の顧客の囲い込みにある。オンライン・ショッピングでの魅力的な商品の販売、旅行・交通や医療・健康なども含む幅広いサービスを提供し顧客を取り込む。その中で個客の嗜好や行動形態についての情報を刻一刻と蓄積し、を活用し魅力的な商品やサービスを継続的に提供する。この威力はグーグルが手掛けたターゲッティング広告で明らかである。検索のビッグ・データをアルゴリズム(組合せの最適化)で解析し、顧客を引き付ける広告を提示する仕組みであり、グーグルやフェイスブックでは最大の収入源となっておりアマゾンもこの業務を開始した。

プラットフォーマーの金融ビジネスでの顧客の囲い込みは巧妙だ。個人分野では代金決済から始め、保険・金融商品の販売などに展開していく。個人の詳細データを保有することで与信判断が緻密化し、カード・ローンや住宅ローンも効果的に提供出来る。法人業務では物販に関与していることで在庫金融は容易だ。プラットフォームを使用している事業会社については、キャッシュフローを把握していることで与信リスクの判断も的確に行える。ビル・ゲイツ(マイクロソフトの創立者)はこの事態を予見し、「We need banking, not banks.」 と言っている。中国ではレストランでの食事の際にはスマート・ホーンでコードを使っての注文と食事代の支払いが日常化しているという。コードを媒介としてお金と購買の情報が流れる仕組みであり、今まで銀行や証券会社が手に入れている情報とは密度が違う。個人や法人顧客がこのようなエコシステム(ビジネス生態系)に取り込まれ、その中で融資、決済、金融商品の提供が行われることで、銀行や証券会社はビジネスを失うとともに顧客情報からも疎外される事態となる。

銀行や証券はどのように対抗すべきであろうか。まずは敵を知る意味で、プラットフォーマーのビジネスモデルを熟知すべきである。ビッグ・データを解析し個々の顧客の嗜好を正確につかみ、効果的に商品やサービスを提供する仕組みである。その上で電子化とネット化を見据えた戦略とビジネスの再構築(digital transformation)を図るべきである。高度な情報システムや人工知能も使い、個人や法人顧客により適切で魅力的なサービスを提供するビジネスモデルへの切り替えが課題となる。営業の前線にはマーケティングやコンサルティングの能力の極めて高い人材を配置して、フェイス・トゥ・フェイスの付加価値の高いビジネスを展開すべきである。オペレーションの効率化を徹底するためのシステムの構築も必須である。Big Techは大量のデータ処理と分析を効率よく安価に行える。これと競争できるコスト構造を目指すべきである。

(文責:門多 丈)

※ 本記事はニッキンレポート2018年8月27日号「ヒトの輪」コラムに投稿したものです。


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