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議決権行使助言会社頼みでは…… 門多 丈

2019年03月15日
武田薬品のシャイアー社買収について賛否を問う臨時株主総会では、議決権助言会社のISSは賛成の意見を出した。このような企業の重大な戦略やビジネスリスクに絡む案件については国内外の機関投資家は自らの基準で主体的な判断をすべきである。

武田薬の昨年12月臨時株主総会の議案は、シャイアー社買収のために同社が発行する新株発行であったが、焦点はこの買収の是非であった。新株発行により25%を超える希薄化が生ずるために特別決議事項であったが、9割を超える賛成を得た。武田薬の6割を超える株主が機関投資家(国内外が半々)でその多くが賛成したことになる。経済性や財務リスクが懸念される買収案件であり、どのような根拠で賛成をしたかが問われる。 

多くの機関投資家はISSなどの議決権行使助言会社の賛成意見に従ったようだ。ISSは「買収価格が妥当」、「3年以内で合理的な投資のリターンを達成できる」と賛成したと聞く。本件は英国当局の規制もありシャイアー社の財務内容の開示は限定的である。企業金融のプロでも判断が難しい案件についてISSはどのように判断し賛成意見を出したのであろうか。新株発行で「希薄化」の影響を受ける武田薬の株主が、この買収によって将来リターンを回収できるかについての分析はしたのであろうか。本件には過大な有利子負債、EBITDA(利払い、税引き・償却前利益)/負債倍率の激増、巨額なのれん代の発生など財務リスクが顕著であるが、IISなどはこれらについてはどう判断をしたのか。 

機関投資家や投資顧問会社は今回のような経済性や財務リスクが問われる重要な案件に於いては、フィデューシャリー・デューティーの点から、その賛否は自ら判断すべきと考える。
(文責:門多 丈)

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2019年1月7日号「複眼」欄に投稿したものです。


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