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CFOとは 門多 丈

2019年05月16日
日本ではCFOの役割についての理解が深まっていない。CFOは資金調達を主な職務とする財務担当役員ではなく、その役割と責任は資本コストを念頭に置いて経営(財務)資源を適切にマネージすることと、適切なバランス・シートと自己資本を維持することにある。

日本企業ではCFOの真の役割について、本人も周囲も理解が不足していることが未だ多い。これは、90年代から活発化した日本企業の海外IR活動などで、従来、財務担当と呼ばれた役員が呼称のうえでCFOに横滑りした経緯があるからではないか。かつては資金タイトの環境で銀行借り入れに主たる責任を負った財務担当役員と、CFOとでは役割が全く違う。 

CFOの役割は、持続的な企業価値の向上のための経営資源のマネジメントであり、バランス・シートの資産、負債、資本にすべてに責任を持つ。CFOが経営陣としてその役割を果たすうえで、依るべき基準は資本コストである。昨年のコーポレートガバナンス・コードの改訂では、経営戦略、経営計画の評価や政策株保有の是非の基準として、初めて「資本のコスト」の言葉が使われた。ROE議論でも、資本のコストに対し追加リターン(エクィティ・プレミアム)をいかに達成するかに焦点が移ってきている。事業ポートフォリオの見直し、新規事業への投資、成長のためのM&Aに主体的に関わるのがCFOの責任であり、資本コストを念頭に置いた厳密な判断が求められる。

CFOの求められる役割や、それに相応しい資質は各企業の成長・競争戦略、グローバル化やグループ経営のあり方によっても違ってくる。例えば、大規模な製薬会社のCFOは、企業価値向上の観点から次の収益源となる創薬の研究開発や知財のポートフォリオ、創薬ベンチャーの買収などの多様な戦略に関してのマネジメントを求められる。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2019年4月1日号「複眼」欄に投稿したものです。


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