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日産のガバナンス改革はこれから 門多 丈

2019年05月09日
日産自動車はガバナンス改善特別委員会の報告書に基づき、取締役会議長は独立社外取締役とする、指名員回答設置会社に移行することなどを株主総会に諮る。ガバナンス改革の点で形は整ってきたが、不祥事を起こした企業風土の改革や統治機構が効果的に機能するかは未だ課題である。

日産自動車のガバナンス改善特別委員会の報告書を読んだ。「取締役会の開催時間は平均して20分足らず」、「ゴーン氏は取締役会において、質問や意見が出ることを嫌った」、「うるさい監査役については再任しなかった」などの悍(おぞ)ましい実態が報告されている。「ゴーン氏は、自己の利益を図る取引に関して、取締役会において利益相反取引の承認を得る必要がある場合にも、必要な事実を開示しなかった」ともあるが、これについては特に独立社外取締役の監督責任が問われる。 

特別委員会が同社のガバナンス改革案として、取締役会議長には独立社外取締役が当たることとしたことは評価できる。特に今回の不祥事では取締役会による「執行」の監督が機能していなかったが、取締役会に 対して「執行」が定期的、かつ 取締役の求めに応じて 適時 に、執行状況を  直接 報告する機会を設けるようにも提言している。指名委員会、監査委員会の委員長を独立社外取締役すること、報酬委員会の委員はすべて独立社外取締役とすること、監査委員会の内部監査 ・統制部門 や監査法人との連携の重要性を指摘したことも適切と思う。 

日産自動車のコーポレートガバナンス改革の形は整って来たが、取締役会が実効性を持つためには取締役会議長と独立社外取締役の人選がカギとなる。不祥事を起こした日産自動車の「忖度」、「指示待ち」、「派閥争い」の企業風土の改革が必須だ。過去の企業不祥事の多くについては「喉元過ぎれば」で企業風土が変わっていないのが実状と聞く。形だけの改革に終わらないように、厳しく監督していくのも取締役会の重要な責任だ。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2019年5月9日号「複眼」欄に投稿したものです。


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