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関西電力役員報酬「補填」の深層 門多 丈

2020年11月10日
関西電力役員報酬「補填」の背景には、経産省に電力値上げを申請した際の条件として、トップでは70%にもなる大幅な役員報酬のカットがあったことが報告書で読み取れる。

関西電力のコンプライアンス委員会の調査報告書が出された。役員退職後の嘱託報酬で、東北大震災後の業績不振の際にカットした役員報酬と金品受領に関して役員個人に課された所得税の追徴金を補填(ほてん)したことの調査である。 

今回の調査報告では、嘱託報酬について役員報酬の後払いとの認識があれば、会社法違反とし取締役に責任があると断じている。調査報告に詳しくある補填の決定のプロセスや嘱託報酬の計算方法から、報酬の後払いであることは明らかである。このような支払いは、取締役会では認められず株主総会で決定すべきであり、会社法3611項違反となる。 

調査報告書は、電力料金値上げの際に「役員報酬削減」と説明しながら裏で補填していたことは、経営陣の倫理上の問題と指摘している。報酬委員会では相談役、顧問の報酬についてもしっかり審議することを求めている。 

本件の背景には経産省に電力値上げを申請した際の条件として、トップでは70%にもなる大幅な役員報酬のカットがあったことが報告書で読み取れる。原発再開の遅れによるコスト上昇が主因であり、見せしめ的に大幅な役員報酬カットを強制した合理性はあったのか。これが今回のような企業経営の歪んだ行動の背景になったとも思う。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞10月9日号「複眼」欄に投稿したものです。


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サイト名: - 2020年12月1日 18時46分

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