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アルケゴスとグリーンシル事件とリスク管理 門多 丈

2021年06月09日
グリーンシルやアルケゴスの金融不祥事は、リーマン危機での金融・デリバティブの取引先の与信リスク管理の教訓が生かされていない、いずれも海外子会社での不祥事であり、グループの内部統制やリスク管理の不備によるものである。

米国投資会社アルケゴスはオプションやスワップ契約などのデリバティブで、英国のサプライチェーン・ファイナンス会社グリーンシルは信用保険で、いずれも過度なレバレッジ・リスクを取り破綻した。

アルケゴスの運用ポジションの全体像や他のプライム・ブローカーとの取引債務を、野村證券は把握できていなかったのではないか。東京海上は、グリーンシルの買取債権が、保険契約条項通リの信用の質を保っているかをどのように管理していたのであろうか。両件とも情報の非対称性や経営者のモラルハザードの問題があり、与信管理の失敗の背景にある。両社は事故調査委員会を設け、問題を究明し株主に対しても説明すべきである。

 リーマン危機の教訓から、金融機関の大口与信は統合的リスク管理の重要項目とされ、取締役会は与信方針や枠の管理の状況を監督する責任がある。アルケゴスについては貸し付け、デリバティブやスワップ契約などリスクを総合的に管理していたかも問われる。デリバティブやスワップ契約については日々の市場の乱暴な動きで、エクスポージャーが急激に増加するリスクに相応しい管理体制が求められる。両件とも海外拠点のリスク管理の失敗であり、グループ・ガバナンスの点で取締役会、監査委員会の内部統制の責任も大きい。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞5月11日号「複眼」欄に投稿したものです。


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