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ボード3.0とコーポレートガバナンス 門多 丈

2022年07月05日
長期投資の専門家を社外取締役として迎え、戦略委員会などで貢献してもらう考えのボード3.0は、次回のガバナンス・コードの改定に向けての大きなテーマであると思います。リード株主論議も含め、株主が企業の成長戦略に主体的に関わっていく課題と思いますが、一方で投資ファンドと企業との利益相反関係も潜在します。

ボード3.0は、効果的な戦略立案やソリューション提供の面から、社外取締役として企業成長にハンズオンで関わった長期投資家を選出すべきとしとの考えである。現実には、企業投資ファンドの関係者を社外取締役候補にすることが多いが、利益相反の問題が潜在する。会社に対しての取締役としての忠実義務とファンドへの投資家に対しての忠実義務との相反の問題である。出身母体のファンドが、会社情報を他の株主よりも優位に入手するとなると、株主平等の原則での問題がある。

米国ではこのような利害相反を想定し、会社とファンドが契約しインサイダー防止、情報管理について明確に取り決めていると理解する。わが国でも選出に当たっては、指名委員会においても、この点を踏まえた厳密な審議を行うべきであり、株主総会での「事業報告」での社外取締役の重要な兼務状況などでの適切な開示もすべきである。 

取締役は「株主共同の利益」のために責任を果たすべきとの考えであるが、このような潜在的な利益相反は、親会社、大株主が「派遣する」社外取締役にも共通する問題でもある。ボード3.0は、次回のガバナンス・コード改定の時に重要なテーマになると予想するが、ファンド「推薦」の社外取締役がどのような形で取締役会決議や戦略委員会に関与すべきか、その規律についての議論もしっかり行うべきである。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞「複眼」2022年5月25日欄に投稿したものです。


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