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「ファンドの春~今こそ問われる運用の質」シンポジウムに出席して 門多 丈

2012年03月26日
AIJ/年金消失事件では、運用を受託する投資顧問会社の専門性と職業倫理が厳しく問われている。「受託責任」は年金基金、投資顧問会社双方に重要である。
今回のAIJ/年金消失事件は年金基金の受託責任、ガバナンスと危機管理について警鐘を鳴らすとともに、運用を受託する投資顧問会社の専門性と職業倫理についても問題提起をしている。先週の「ファンドの春」シンポジウムではこの点に関する活発な議論がなされた。先日当研究会の月例勉強会の講師として「賢明なる投資家によるガバナンス」のタイトルで講演して頂いた岡本和久(おかもとかずひさ)氏が呼びかけの一人である。今回の集まりは、AIJ事件を契機に特に独立系投資顧問に対して否定的なセンチメントになっていることに対することに危惧表明することの目的もあった。

シンポジウムの冒頭で岡本氏は「車を作る技術と運転する技術は違う」とし、今回の事件の最大の教訓として投資顧問業者と投資家の双方が専門性を高める必要を強調された。出席した「独立系」投資顧問会社、ファンドの代表の主な発言を列記すると;

  • 今回の事件は年金制度、運用の中身、投資顧問業、投信販売のあり方を見直すチャンス
  • 顧客との情報格差が大きいことから、投資顧問業に厳しく問われているのはプロ意識
  • 重要なのは顧客とのタイムリーな透明性の高いコミュニケーション
  • 今回の事件を契機に(投資を含めた)リスクを取らない姿勢が強まるのは国として問題―リスク・マネーを育てるためにも過剰な規制は危険
  • 投資立国が日本の課題であり、そのためには日本の投資顧問業のレベルの向上が必須
  • 運用の充実には投資顧問会社の多様性が重要
  • (投資顧問社)寡占?、大尊小卑 のリスクを懸念
  • (「大企業系」投資顧問会社の比較として)独立系投資顧問会社の特徴は運用責任事態が明確に問われること(サラリーマン・ファンドマネージャーではない)

 このシンポジウムでは私も「運用を委託する」側に重点を置き発言した。発言の趣旨としては、

  1.  年金基金の受託責任から言えば投資顧問会社の「独立性」が鍵であり、独立系投資顧問に対して否定的なセンチメントには与しない。マスコミにもこの点での見識が問われている。
  2. 今回の事件は犯罪であり、厚労省、金融庁の監督責任の問題である。(2000億円の預かり資産のある投資顧問会社に5年以上も検査に入っていなかった)投資顧問協会などの自主規制・ルールの世界の話ではない。
  3. 今後の監督・規制について;金融庁は今回の事件を契機に膨大な資料を投資顧問会社から出させた。このような資料を活用すればAIJ事件は防げたか、また今後のリスク・フォーカスの立場での監督・規制に活用できるか、の説明義務が金融庁にはある。 

キー・ワードは「受託責任」である。これは年金基金、投資顧問会社双方に重要であるが、具体的には、1) 年金基金としては資産の実在性、キャッシュフローの保全、客観的なプライシングの観点での投資の判断・管理を行うべきである、2) 投資顧問会社は内部統制の整備、オペレ―ションの透明性を保つことで請託に値することの証明義務があること、である。この二つの責任をつなぐものとして、デュー・デリジェンス(DD)と投資後の管理(報告)が重要になるが、効果的な遂行にはコンサルタント、信託銀行の関与が重要検討課題となろう。

ガバナンス研究会の立場からは投資顧問会社にも社外取締役、監査役の配置することを提案し、社外役員がリスク・フォーカスの監視・監督をしている体制が望ましいと述べた。

(文責:門多 丈)

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