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3つの企業不祥事に見るコーポレートガバナンスの破綻 安田 正敏

2011年10月21日
コーポレートガバナンスは美辞麗句を並べた憲章や方針をいくら書いてもそれだけでは機能しません。経営トップがその重要性を、身をもって認識し行動しないかぎりコーポレートガバナンスは破綻します。そしてその会社は根っこの腐った木のように枯れてしまいます。
最近大企業における不祥事が立て続けに起きています。大王製紙の前会長の特別背任容疑、九州電力の「やらせメール」問題、オリンパスのM&Aを巡る疑惑と社長の突然の解任です。この事件の詳細について筆者はマスコミで報道されている以上の情報を持ち合わせていないので、その限りでこの3つの不祥事の根底に共通しているコーポレートガバナンスの破綻について意見を述べてみたいと思います。
3つの企業とも東証1部上場の大企業であり、外形的には立派なコーポレートガバナンスの体制を整えています。3社とも監査役会設置会社でそれぞれ複数名の社外監査役がおり、またオリンパスには社外監査役に加え3名の社外取締役がおります。3社のホームページを見ると3社ともCSRについて大変立派なサイトを構築しており、その中で内部統制やコンプライアンスの体制、情報公開への取り組みについてその完璧さを誇っています。

例えば九州電力のCSRのサイトではCSRの取り組みの一つに「経営の透明性確保に向けた情報公開の一層の推進」を挙げています。その中で「九州電力情報公開の心構え」として次のようにうたっています。少し長くなりますが引用してみます。

「当社は、企業としての社会的責任を深く認識し、『九州電力グループ行動憲章』に基づいた公平・公正な事業活動に徹するとともに、公益を担うものとして地域共生の基本理念のもとに、事業活動の透明性を確保し、お客さまのご理解と信頼を得るよう努めていかなければなりません。このため、社員一人ひとりが、以下の心構えで、情報公開を推進していくこととします。

  1. お客さまに対し、積極的に情報を公開しよう。 
  2. お客さまの気持ちに立って、わかりやすく、迅速、的確な情報公開を心掛けよう。 
  3. あらゆる機会を通じて、お客さまの情報ニーズを把握しよう。 
  4. お客さまとの間に意識・認識のズレが生じないよう、常に自己点検しよう。

眞部利應社長をはじめとする九州電力経営陣の「やらせメール」や第三者委員会の調査の核心部分を無視した報告書の作成、枝野経産相からの批判(すこし感情的な批判ですが)に対し報告書を書きなおすという自律のない行動など、実際の経営陣の行動と比べるとこの行動憲章は何と白けてみえることでしょうか!
長くなるので引用しませんが、大王製紙の井川意高前会長の特別背任容疑はこの会社の掲げるCSRの方針を絵に描いた餅のように見せます。今回のオリンパスのM&Aを巡る疑惑に対する菊川会長兼社長および経営陣の行動は、オリンパスの掲げる情報開示方針を唯々虚しく見せます。

この3つの企業の不祥事に共通する第1の特徴は、経営トップの姿勢です。経営トップがコーポレートガバナンスを支える内部統制、コンプライアンス、情報開示等に対し認識が薄いかほとんど無いことを彼らの行動自体が示しています。大王製紙の井川前会長は論ずるに値しませんが、九州電力の眞部社長は、社会に対する公正性の意識が全く欠如しております。オリンパスの菊川会長兼社長は、一昨日(10月19日)になってやっと、2006年から2008年にかけて実施した国内3社の買収に伴う財務情報を開示するなど、情報開示の重要性に対する認識が欠如しています。あるいは認識はあっても自らを守るために意図的に隠していたのかもしれません。

もうひとつ共通する特徴は、これらの会社で社長をはじめとする取締役を監視する監査役(オリンパスの場合は社外監査役も含んむ)が機能していないことです。現在の会社法のもとでは監査役の権限は相当強化されており監査役の調査権も含めて行動を起こすとこれらの不祥事に対する未然の抑止力になったはずです。それがなされなかったことは残念でなりません。
コーポレートガバナンスの破綻は企業価値を大きく損ねます。それをオリンパスの株価の下落が如実に示しています。コーポレートガバナンスは美辞麗句を並べた憲章や方針をいくら書いてもそれだけでは機能しません。経営トップがその重要性を、身をもって認識し行動しないかぎりコーポレートガバナンスは破綻します。そしてその会社は根っこの腐った木のように枯れてしまいます。

(文責:安田正敏)

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