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銀行不祥事とコーポレートガバナンス(2) 門多 丈

2011年08月29日
経営破綻した林原の中国銀行株式の大量保有は異常だ。関係者取引、利害相反の問題がありえた。林原への貸し付けで巨額な損失を出した中国銀行の内部統制上のこのような問題は、株主が徹底的に究明すべきである。
前回のブログでは日本振興銀行(「振興銀」)の経営陣に対する整理回収機構(「機構」)による損害賠償の請求を取り上げた。この訴訟は機構が預金保険機構から振興銀への債権を譲渡されたことから行われたもので、株主による振興銀の社外取締役を含む旧経営陣に対する代表訴訟は別途これから提訴されるものと考える。

中国銀行は更生手続き中のバイオ企業林原のグループ3社が保有する中国銀行株式について、公開買い付けで取得すると発表した。この買い付けで取得する自社株式は、今年3月末での持ち株比率で同行株式の10.77%になるという。事業会社が一つの銀行株をこのように大量に保有すること自体が異常であるが、このような株式保有の状況はいわゆる関係者取引の疑惑につながる。株主としてのプレッシャーを用いて量的にも条件面でも有利な融資を引き出しうるという問題である。

このような株式保有は利害相反のリスクを内包しており、中国銀行のコーポレートガバナンス上の重要な問題であった。銀行にとって株主への義務と貸付けの権利での利益相反となる。林原への融資に関し、融資の審査、決定、管理、保全の面で中国銀行の内部統制が機能していたかの検証が必要である。金融界では林原は正式な会計監査を受けていなかったのではないかという噂が根強くある。中国銀行がどのような基準で林原への融資の判断をし、貸付け債権を管理していたかに疑問が残る。林原の破綻により中国銀行は貸倒で巨額な損失を蒙った。中国銀行の株主は株主権を正当に発揮し中国銀行経営陣に、本件についての然るべき説明を求めるべきと考える。問題の深刻さからすると、やはり代表訴訟が当然あって良い事件と思う。 

(文責:門多 丈)

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