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銀行不祥事とコーポレートガバナンス(1) 門多 丈

2011年08月26日
整理回収機構が日本振興銀行の社外取締役を含む旧経営陣に対50億円の損害賠償の訴えを東京地裁に行った。判決で「重大な過失」が認定された場合は、役員の「責任限定」の対象外となるので巨額の損害賠償を個人が負担することとなる。
整理回収機構(「機構」)が日本振興銀行(「振興銀」)の破綻に関して、同行が回収見込みの低い債権をSFCC(旧商工ファンド)から高額で買い取ったとし、会社法第423条に基き東京地裁に旧経営陣7人を相手に50億円(注)の損害賠償の訴訟を申し立てた。注目すべきは今回の訴訟が社外取締役3人を含めてのものであることである。

本事案では機構側は「回収不能の恐れが強いことが予測出来る中での債権買い取りは、社外取締役の責任を問える重大な過失」と考えている。取締役が不祥事に関し「重大な過失」を犯したと裁判で認定された時のインパクトは大きい。会社法第425条などにある損害賠償責任の一部免除(責任限定)の適用の対象外となる。また役員賠償責任保険での補填も受けることができない。社外取締役を含む旧経営陣は巨額の損害賠償を個人として求められることとなるのである。

裁判で本件について具体的に取締役の責任がどのように審理されるかが興味深い。取締役会の審議に於いて、SFCCからの債権買い取りがどのような規定で扱われ、いかに情報を把握し、取引を判断したかが究明されるべきである。これに関しては、大口融資規制と安全性の原則の違反を機構は指摘している。また判決では、把握する情報の量や監督責任の違いから、執行取締役と社外取締役の賠償責任にどのような差をつけるのかにも興味がある。

本件で監査役の責任がどう問われるかもコーポレートガバナンス上は興味があるが、振興銀の特別調査委員会の報告などからはこの点がどのような議論になったかははっきりしない。

(注)機構は本件による損害は約150億円としているが、その内金として50億円を請求すると説明している。 

(文責:門多 丈)

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