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あまりに軽い経営者の言葉 門多 丈

2011年08月22日
企業経営者の最近の発言があまりに軽い。経営戦略の明確な提示をせず、取締役会や株主を無視したオーナー的な言動はコーポレートガバナンスの原則に反する。
首相や政治家の軽い言葉が日本の国の威信を低下させているが、企業経営者の最近の発言もあまりに軽い。東京電力の2011年4-6月の連結決算発表時に西沢社長は記者会見で債務超過になる可能性について質問されたのに対し「原子力損害賠償支援機構から賠償資金をもらう。そのお金は決算上利益として計上されるので、債務超過になる可能性はない」と答えた。これほど節度のない発言はない。現時点で会計上は債務超過をのがれても、将来の電力料金値上げで「機構」に「賠償金」を返済するしかない。電力消費者のその痛みに全く配慮しない軽率な発言である。

最近の円高に対する経団連の「悲鳴」も異常だ。超円高と電力不足の中で政府が然るべきデフレ脱却の手を打たないと産業の空洞化が加速すると「警告」する。その前に企業経営者は現在の環境下での自らの企業戦略を提示するとともに、今まで円高傾向に対しどのような手を打って来たかの説明義務がある。この間も海外の事業を積極的に展開し売り上げを伸ばし、高収益を上げている日本の優良企業もある現実も直視すべきである。経済や企業競争環境の変化に適切に対応できない経営者は退陣すべしと言う、コーポレートガバナンス上の原則も経営陣には自覚してもらいたい。

九州電力の「やらせメール」事件については、取締役会が機能しているとは思えない。企業統治やコンプライアンス上の大問題であり、取締役会には経営から然るべき報告と説明をすべきである。社長が辞任について会長に相談した際に、会長はこれを慰留し「(社長は)経営と営業上で有能な人材」と留任させた。社長など経営陣の人事は取締役会や株主が決めるべきものであり、その権利を無視した言動でありコーポレートガバナンス上の由々しき問題である。大手コンビニの著名な若手経営者が新聞のインタビューで「あと10年ぐらいは社長をやるつもり」と語った。社長が適任かは株主と顧客、取引先などのステークホールダーが判断すべきであり、社長がその企業のオーナーではない。この原則を真摯に受けとめるべきである。

(文責:門多 丈)

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