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「暴走」する中国と国家のガバナンス 門多 丈

2011年08月01日
中国の高速鉄道事故は、安全、情報、技術・プロジェクトの管理面での深刻な問題である。中国は国民の「安心と安全」のための技術を海外から取り入れるべく、現在の権威主義的な姿勢を改め協調の外交に舵取りを変えるべきである。
中国の高速鉄道事故は安全、情報、技術・プロジェクト管理での深刻な問題であり、国家レベルでのガバナンスが問われる事態となっている。中国鉄道省の幹部が「安全性よりも「世界一」のスピードなどを優先させた設計であった」と暴露発言をしており、運転手の訓練も速製であったとのことである。追突事故機関車についての十分な調査もせずに先頭部分を土に埋めたことで、政府の「隠蔽体質」が批判されている。追突防止の自動制御装置や信号機器の不備など、鉄道の運行を管理するシステム自体の信頼性が問われている。

「経済大国」を誇示する中国であるが、中国の成長が停滞し雇用の不安定やインフレの危険が顕在化し、地方の困窮化や所得格差が一層深刻化する時が何れ来る。その際にも政府に今回のような管理体制の不備と隠蔽体質が残っていると、国内は深刻な政情不安に陥るであろう。

国際的には中国の権威主義が横行している。南沙諸島や尖閣列島での領土紛争、東シナ海での軍事威圧行動、資源確保の狙いでのスーダンなどの独裁国家の支援などがあり。日本などからの技術を利用しながらも独自の高速技術としてCRH380を米国での特許申請をする専横的な動きもあった。

国民の「安心と安全」を確保するための技術を先進国から今のうちに導入することが将来の「危機」の備えになると思うが、そのためには中国は高飛車な姿勢を改め協調と対話の国際関係の外交に変えるべきである。日本を含めた先進各国もグローバルな「安心と安全」のために、この要請に積極的に応じるべきである。

これには素晴らしい前例がある。80年代初めに鄧小平氏が日本を訪問し、精力的に工場現場などを視察した。鄧小平氏は文化大革命で荒廃した中国の経済を立て直すためには、日本の技術と生産管理の手法の導入が必要と痛感した。鄧小平氏の真摯な協力依頼に対し、

意気に感じた日本の経営者は技術移転や工場進出で積極的に対応した。その代表例が新日鉄の宝山製鉄所への建設協力であり、松下の北京テレビ・ブラウン管工場の進出である。

中国がこのように外交に舵取りを変えることができるか。中国の国家としてのガバナンスが試されていると言えよう。

(文責:門多 丈)

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