ブログ詳細

金融円滑化法とコーポレートガバナンス 門多 丈

2011年05月09日
中小企業の成長戦略や経営改善のために、銀行のコンサルティング機能についての期待が高まっている。融資取引との利害相反問題を解決するためには銀行の経営の自己規律、融資先企業の経営経営の主体性の確立と言う、双方のコーポレートガバナンスの強化の中で解決すべきである。
金融円滑化法が来年3月末まで1年延長された。貸付け条件の変更(緩和)等を行った中小企業の経営改善計画が予定通り実現するかが、銀行経営にとっては重要な課題である。これに関連し銀行のコンサルティング機能強化についての期待が高まっている。地域密着型金融(リレバン)を目指す地銀にとって、コンサルティング機能の強化は経営改善や事業再生に関してのみならず、取引企業の新規事業や成長戦略に対してもソリューションを提供する点で重要になる。

銀行のコンサルティング機能発揮に関する議論では2つの重要なポイントがある。(エクィテイ・スティクとの)利害相反と企業支配の問題である。融資先企業に企業経営や戦略についてのコンサルティングを行うことは、業績が悪化した時の結果責任の問題につながりうる。その際には融資の引き上げも難しくなり実質は出資していることになりうる、と言う懸念もある。企業経営への過度な関与は企業支配や、優越的な地位の濫用と考えられるリスクもある。

これらの問題はリレバンをビジネスモデルとする地銀にとっては避けられない問題であり、銀行、企業とも主体的に斬新な発想で解決していく必要があるのではないか。

銀行にとって地域密着型金融は、取引先の企業や個人に対し「ゆりかごから墓場」まで金融サービスを提供するモデルである。これを効果的に行うには経営資源の最適配分と経営・事業のポジショニングの明確が重要になる。その観点からは取引企業のライフサイクルと銀行が提供すべきサービスのマトリックス経営管理を行う手法が有効となろう。具体的には縦軸には企業のステージ(創業、初期発展、国際展開やM&Aなどの成長、事業承継や売却などの出口)、横軸には銀行が提供する経営資源(融資、出資、ファイナンス、国際展開やM&Aなどの多様なコンサル機能)でマトリックスを描く。このマトリックスの中で相手企業ごとに銀行の「取引」のポジショニング、戦略を明確にする。一方企業サイドでも創業、成長、経営改善のために経営が主体的に取り組むことが求められる。銀行と企業が対等な立場で協働するためには、この企業においてコーポレートガバナンスが効果的に働いていることも重要になる。

取引先企業の成長と地域経済の発展のためには、銀行経営の自己規律と融資先企業の経営経営の主体性の確立と言う、双方のコーポレートガバナンスの強化が課題となると考える。

(文責:門多 丈)

この記事に対するご意見・ご感想をお寄せください。


こちらのURLをコピーして下さい

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

ページトップへ