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子会社の監督はリスク・フォーカスで(2) 門多 丈

2011年04月01日
親会社からの社外役員の「派遣」は子会社自体の内部統制強化の観点から審査されるべきである。取締役、監査役はもっぱらその就任する企業の経営の健全性と成長に貢献すべきという考えを徹底する必要がある。
日本企業のガバナンスの充実の課題の中で、連結経営の視点から「企業集団」としての内部統制の整備・構築や健全性の維持が強く求められてきている。前回の同題のブログでは、子会社の独立性や経営の自立性を守りながら親会社として管理監督する課題と、効果的な監視のためのリスク・フォーカスのアプローチを論じた。

先月公表された監査役協会 「監査役監査基準」(雛型)改定の中でも、(親会社の)取締役の職務執行についての監督に関連し「取締役の子会社等の管理に関する職務の執行の状況を監視し検証する。」こと、企業集団の健全性維持の観点から「監査役は、子会社等において生じる不祥事等が会社に与える損害の重大性の程度を考慮して、内部統制システムが会社及び子会社等において適切に構築・運用されているかに留意してその職務を執行するとともに、企業集団全体における監査の環境の整備にも努める。」ことが22条で明記された。

連結ベースでのガバナンスの強化の課題に関し、最近ある会合で親会社から社外取締役、社外監査役を「派遣」することの是非を議論した。親会社からの「派遣」ではなれ合いの可能性がないか、効果的な企業統治のためには独立役員を入れるべきではないか、という問題提起がされたのが背景である。その際に筆者は次のように論じた;

企業集団としての健全性維持の観点からは、親会社は取締役や監査役の「派遣」を検討すべきであり、これは株主権の行使の手段でもある。(前回のブログでも述べたが、子会社の管理・監督の手段として「リスクが増大したと判断できる場合には、親会社から派遣している取締役や監査役を通じて当該子会社全体、あるいは特定の部門に対して重点的な内部監査や監査役監査を行うことを求める」仕組みも可能となる。)
子会社の業態が親会社と違っているとか特に規制業種である場合などは、リスク・フォーカスの監督の観点からは専門性の高い独立役員を外部から起用することも効果的であろう。(多様なステーク・ホールダーを視野に入れた子会社レベルでの、効果的な企業統治のシステムつくりにもなりうる)。

親会社からの社外役員の「派遣」は子会社自体の内部統制強化の観点から審査されるべきである。この点に関し筆者は非常勤取締役となっている香港上場会社で興味ある経験をした。大株主からの取締役「派遣」を受け入れるべきかがテーマであったが、その是非を社外独立取締役中心の指名委員会でまず検討した。その答申を取締役会で審議し決定したのであるが、取締役はもっぱらその就任する企業の経営の健全性と成長に貢献すべき、という考えが徹底されていると思った。

(文責:門多 丈)

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