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コーポレートガバナンスとサステナビリティは同根 門多 丈

2011年03月07日
年金などのポートフォリオ運用では全ての投資の根底にsustainability とcorporate governance の観点があるべきだ。グローバル、マクロの大きな流れを頭に入れてミクロを管理するsustainability と、企業のミッション・理念を見据えたうえで企業価値の向上を目指すcorporate governanceとの間には相通じるものがある。
先日カリフォルニアで開かれた公的年金のラウンドテーブルに出席した。米国、欧州、アジアの公的年金基金で組織するPacific Pension Institute が主催する集まりで、グローバルな投資環境の変化、新しい投資手法やポートフォリオのリスク管理などを議論する場である。今回も米国のカルパース、カルスターズ、カナダのオンタリオ教職員基金、オランダのAPG、韓国のNPSなどの有力年金基金、アジア開銀などの国際金融機関が出席していた。

今回の会議のテーマは Environment for Investment (年金投資と環境問題)で、気候変動、資源・エネルギー問題、排出権やエネルギー効率などのトピックが取り上げられた。会議ではインフラファンド、水の「安全」(その中では中国の水問題の将来の深刻さが話題になった)、中東情勢などにも関連して原油・ガス資源のセッションもあった。この会議に参加する前は、会議のテーマからはインフラファンドなどポートフォリオ運用戦略での新しい投資分野(新しいasset class の観点から)を取り上げるのかと期待していたが、意外なことに論点は環境、資源、エネルギー問題を、既存の株式、債券などのポートフォリオ投資の根底にあるリスクやオポチュニティの観点から考えるべきということであった。

投資先企業の分析・評価にあたっては、ビジネス戦略や技術革新、事業効率などについて環境、資源、エネルギーの切り口でも明確に行うべき、環境への配慮、政府のエネルギー政策や環境関連の規制なども考慮した投資管理もすべきという、極めてオーソドックスな議論が中心となった。この議論をリードした一人であるオランダの有力年金APG の幹部(元英国のマーチャント・バンカー)のタイトルは Head of sustainability and corporate governance で、全ての投資の根底にsustainability とcorporate governance の課題が共にあるべきという問題意識をまさに反映したものと感じた。アプローチの面でも、グローバル、マクロの大きな流れを頭に入れてミクロを管理するsustainability と企業のミッション・理念を見据えたうえで企業価値の向上を目指すcorporate governanceとの間には相通じるものがあると思いが至った。

ホットな話題であるチュニジア、エジプトなど中東問題ついては「(事態の進展の)方向感は正しい」とかなり楽観的なコメントが多かった(今まで米国が非民主的な政権を支えてきたという反省がまずは必要、と個人的には思うが)。米国のエネルギー事情については掘削技術のドラマティックな革新で、この5年間の国内でのガス開発は大成功とシェブロンの元副会長が報告していた。その結果、海外のガスへの依存が大きく減っているとのこと。中国については今後蓄電池事業が非常に有望であろうとのコメントもあった。

(文責:門多 丈)

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