ブログ

産業としての銀行業 安田 正敏

個々の銀行のコーポレート・ガバナンスについて議論することはもちろん重要ですが、今回の金融危機を見ていると、それだけでは十分ではないような気がします。つまり銀行業は産業としてなぜ失敗し、世界の産業・経済を混乱に陥れたかということを銀行の顧客である借手(企業及び消費者)、預金者、投資家、格付機関、金融監督機関などの銀行業を取り巻く関係者の考え方と行動も含めて議論する必要があると思います。

違和感と緊張感-社外取締役を巡る感情 安田 正敏

筆者は最近、社外取締役を巡る感情について新しいことばを聞きました。「緊張感」ということばです。この「緊張感」ということばこそ、企業の意思決定のプロセスに社外取締役あるいは社外監査役が持ち込むべき価値ではないかと思います。

金融危機と時価評価の功罪 安田 正敏

時価評価ルールは、資産の保有者が売りたいときに売れる十分な規模を持った市場が存在して初めて意味をもつルールです。単なる会計基準あるいは財務報告基準の観点からだけでなく、市場が不完全な場合、あるいは不完全になった場合に、そのルールがどのように変更されるべきか、ルールを一時的に停止すべきかなどの行政的ガイドラインと平行して運用されるべきではないでしょうか。

子離れしない親 安田 正敏

親会社が上場子会社の日常的な経営執行に口を出す状況は日本の企業グループにふつうに見られます。しかし、このようなひとつの企業グループ内の一見些細な軋轢に見える事象が、日本企業の力を弱め、国全体の経済力を弱めている、という気がしてなりません。

コーポレートガバナンスの実効性が問われるケース 安田 正敏

外形基準の観点からもコンプライアンスの観点からも、一見何の問題もない企業にコーポレートガバナンスの深刻な問題が潜んでいる場合があります。実践コーポレートガバナンス研究会の役割は、現実的な問題について議論を深めていくことで、このような状況を実践的に解決することを目指すことだと思います。

サイレントマジョリティって何ですか? 安田 正敏

筆者が疑問に思うのは、企業の株主の中でサイレントマジョリティってありうるだろうかという点です。「口を出さずに資金だけは提供して欲しい」というのであれば、優先株や社債などの発行という道があるのが現在の資本市場です。日本を代表する大企業の経営者の中に、サイレントマジョリティという株主を求めている経営者がいたとすれば、いささか株式会社制度にたいする理解不足といえるのではないでしょうか。

内部監査とコーポレートガバナンスに係る法制度 安田 正敏

会社の内部監査はコーポレートガバナンス、内部統制に関する二つの法律(会社法と金融商品取引法)及び監査役制度(会社法)の関係の中でどのように位置づけられるのか整理しました。要約しますと、会社の内部監査は直接的に法律によって規定され援護されているものではありませんが、コーポレートガバナンスを支える内部統制を実効的に機能させるために、監査役制度及び会社法による内部統制の規定、J-SOXなどの法律が、実質的に企業に要請している重要な機能ということができるのではないでしょうか。

欲望という名の投資家 安田 正敏

筆者は、米国の金融規制案に全面的に賛成するものではありませんが、大手金融機関のリスクのとり方については、何らかの公的な強制力を持った規制が必要である正当な理由があると考えます。それは、大手金融機関が破綻した場合、投資家が負う負担と社会が負う負担の間に巨大な非対称性が存在するということです。

ウォーカー・レビュー(最終回)報酬 安田 正敏

米国のサブプライム・ローンを発端とする今回の金融危機における欧米の巨大金融機関のコーポレートガバナンスにおいて、ちょうど、りっぱな安全装置(リスクマネジメント)のついた高級車を酔っ払いが運転するというような事態が生じました。その重要な原因のひとつは、取締役、高級幹部の、一般の人の想像を絶する巨額の報酬が極度の業績連動の仕組みになっていたことです。その弊害を正すためにウォーカー・レビューが提言する主要な施策についてみて見ます。

ウォーカー・レビュー(4)リスクマネジメント  安田 正敏

ウォーカー・レビューのリスクマネジメントの分野での提言は、組織論に終始しており、そのような施策で今回のような金融危機を効果的に防げるかどうかという点については極めて疑問です。リスクマネジメントに関する施策については、金融機関の業績についてリスク要因をどのように反映させ、リスク調整済業績をどのように評価するかという点が最も重要であると思います。

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

ページトップへ